稲子岳南壁 左カンテルート

日 程 2025年11月24日(月)-2025年11月24日(月)
ルート 稲子岳南壁左カンテルート
メンバー 石・鶴・松・大(記)

【コースタイム】
07:00 稲子湯駐車場発 〜 08:30 しらびそ小屋着 〜 09:00 しらびそ小屋発 〜 10:00 取付 〜 10:30 登攀開始 〜 15:00 終了点 〜 17:00 しらびそ小屋着 〜 18:00 稲子湯駐車場着、下山

【登攀記録】
勤労感謝の日に、新人1名を含む4名で稲子岳南壁左カンテルートへ。

先週はザイル祭があり、翌日に広沢寺でアイゼン・バイルトレーニングを行ったのでその実践として計画。ザックにくくりつけたアックスに我ながら見惚れる。またこの季節がやって来たか、と胸が高鳴る。

前泊は道の駅南きよさと。なかなかの冷え込みだったが翌週に行われる雪訓の話で盛り上がり酒が進む。時々謎の鳥の鳴き声に驚かされつつ、1時就寝。翌日は朝5時起床、5:10出発というアグレッシブな計画だったが、そこはさすがの岳人集団、ヘッデンを光らせながらキビキビと行動し、速やかに出発ができた。朝ごはんを買いにコンビニへ。

稲子湯駐車場に着く頃には既に明るくなっていた。そして肝心の雪は見当たらなかった。果たしてアイゼン・バイルは活躍するのだろうか。

幸いにも天気は良さそうである。それは良いのだがこの時期はウェアリングが悩ましい。
ソフトシェルで行く者、ヤッケを着ずにレインのみ携行の者、私は寒さが苦手なのでハードシェルにオーバーパンツというフル装備。朝の気温に合わせ最初からバラクラバをつけるも、歩き出すとやはり暑いので途中で色々と脱ぐ羽目に。キャップを持ってくれば良かった。

冬の到来を感じさせない森の様子に不安に思っていたが、結局道中ほとんど雪も氷もなく、辛うじて僅かに塵レベルで存在するか、もしくは霜柱がニョキニョキと生えているくらいだった。もしかしてフラットソールだったか、なんて思いながら歩いていると、しらびそ小屋に到着。

みどり池にはうっすらと氷が張っており、中山峠方面の登山道側の湖上にはわずかな雪と足跡があった。怖いもの知らずがいた者だ。樹間を飛び交うリスの姿も見られた。相変わらずの長閑な佇まいに癒される。皆でかわるがわる天狗岳を撮影。

いつかここで、のんびりテン泊してみたいものだと思いつつ、なかなか実行できていない。

しらびそ小屋で一本立てた後、少し中山峠方面へ進む。程なくしてピンクテープを発見。ロープを潜って南壁へ向かう。

踏み跡が多く迷いやすいため、「なるべく左」を意識しながら進むと良いと思われる。

左カンテルートは赤いハーケンが目印。初心者帯同でも登りやすい人気ルートで、要所にはアンカーが豊富に打たれており、懸垂用の残置支点も確認できたため、途中撤退の安心感もある。フラットソールでは3P目が核心だが、冬装備の場合1P目が核心と言われているらしい。

組分けは 石・松、鶴・大。

1P目 35m

トップは石さん。
アックスを引っかけ、ドラツースタイルで猫のようにスルスルと登っていく。ビレイ解除のコール後、先に鶴・大を行かせてもらうことに。鶴・大のスタート位置はやや上だったためトラバースが加わり、体感難易度は少し高めとなった。鶴さんはロープをフィックスしてもらいアッセンダーで登攀。大はお助けシュリンゲでA0しながら通過した。松さんは二度目の冬靴・アイゼンということもあり全ピッチフォローに徹し、皆の様子を撮影してくれた。動画の共有が楽しみだ。

2P目 30m

大がトップで登攀。アックスは時折引っ掛ける程度で、ほぼ首にかけるアクセサリー状態。難しいパートもなく無事ビレイポイントに到着。支点構築にやや手間取り、フォローを待たせてしまった。また構築時ロープでのセルフビレイを失念し、慌てて取り直した。支点構築をもっとシンプルかつ流れるように行えるよう、練習が必要だと痛感した。

3P目(Ⅲ+) トポでは35m

この頃には日が陰り、風も強まってきた。体感温度は一気に低下。雲行きが怪しい。
右のチムニーか左のクラックかの選択だったが、比較的易しいチムニーを選択。石さんトップで進む。

チムニー内から左へ抜ける部分が悪く、やはりこのピッチが最も難しく感じた。その後右に進んだが、ロープがピナクルに引っかかり流れが悪く、距離と風でコールも届きづらい。フォローの松さんに鶴・大のロープを上げてもらいフォローで通過することにした。左への移動ではロープの出し入れやテンションでの補助が必要となり、通信はトランシーバーで対応。携行していて正解だった。ロープを張られると身動きが取れなくなり、動きを阻害されてしまうようだ。

続く鶴さんも左に移るところで苦戦している。残置シュリンゲを使いつつ、さらに追加しながら抜けて行った。

最後に登った大。しつこいくらい打たれたアンカーの全てにお助けシュリンゲがぶら下がっていた。ありがたくA0させてもらった。

4P目

心配された天候も程なくして回復したものの、風は依然強い。4P目は時間の都合で左から巻いて簡単な歩きへ。ただし浮石が多く、大きな岩も簡単に動く状態で落石の危険性が高い。ロープアップや登攀時には細心の注意が必要と感じた。

終了点

ザレ場を詰め、終了点に着いたのは15時。
思っていたよりも時間がかかってしまった。

正面にはうっすら白くなった天狗岳と、八ヶ岳の山々が裾野を広げ、我々の到着を待っていてくれた。このご褒美があるからこそだ。だから山登りって、好きだ。

時間はなかったがやはり山頂は踏んでおきたい。

山頂標は前回見たものとは趣が異なっていた。次回もまたきっと変化があるのだろう。これはこれでまた楽しみの一つだ。

しらびそ小屋を出る頃にはすっかり日が暮れ、ヘッドライト下山となったが、シーズン初めにして実に内容の濃い一日となった。
変則的なロープワークも交えつつ、新人の松さんにとっても大きな経験となったはずだ。
チームの技量に応じて現場で最適解を探り、臨機応変に対応する。その積み重ねこそが、パーティー登攀の醍醐味なのだろう。
多くの課題と収穫が得られた山行だった。次に確実につなげていきたい。

楽しい時間と学びをありがとうございました。
また行きましょう。

【メンバーコメント】

3ピッチ目、ロープの流れが悪く重く、コールも届かなかった。
もっと手前で切るべきだった。
クライミングは奥が深い。


八ヶ岳ブルーに仄かな雪化粧。
時折吹き抜ける冷たい風と高所感に肝を冷やす。
総じて気持ちよい一日でした。


前回はオールフォローで恐怖しかなかったが、今回はリードもでき、終始楽しい登攀だった。
支点構築時、一つ一つの動作をシンプルにして素早く動けるよう意識したい。
リードでの登攀を意識し、A0を減らしていきたい。

松(タケル)
各ピッチいろいろ勉強できてすごく楽しかったです。
今回の経験をこれからの山行に活かして成長していきたいです。

【下山後】
温泉:八峰の湯
食事:ストローハット

ストローハットは是非とも再訪したい洋食屋だ。写真が乏しいため店員におすすめを聞くと「どれもおすすめ」とのこと。次回も同じメニューを注文する客が多いらしく、ほぼノーヒントでの決断となった。己の直感が頼りだ。結果どの料理も「当たり」であった。確かに次回も同じものを食べたくなる中毒性が、そこにはあったのだ。八ヶ岳エリア訪問の際の、新たな楽しみが増えた。

(文:大)