山行報告

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【山域・山名等】

北アルプス剱岳・赤谷尾根・小窓尾根・剱尾根

【日時】

2008年05月02日(金)夜行〜05月06日(火)

【メンバー】

CL山下眞一・津田 暢・井上哲也・上坂和久  《剱尾根隊》
SL木村俊久・石綿健一・立石木綿子       《小窓尾根隊》
SL谷口浩平・長田義和・加藤 優         《赤谷尾根隊》

【ルート】
02日(金)各車集合場所(21:00)-(0:00)松本 IC-(4:00)馬場島
03日(土)馬場島(7:00)-
《赤谷隊》(10:15)稜線-(13:10)1863m台地-(14:00)2000m台地幕営(19:00就寝)
《小窓隊》(10:30)雷岩-(12:15)1614mピーク-(14:00)1990mピーク幕営(19:00就寝)
《剱隊》(10:30)池ノ谷出合-(12:30)終わりの滝上-(15:00)二俣幕営(18:30就寝)
04日(日) 《赤谷隊》(4:30)2000m台地-(9:10)大窓-(12:55)池ノ平山-(16:00)小窓幕営(19:30就寝)
《小窓隊》(4:00)1990mピーク-(9:10)マッチ箱の頭-(11:15)三ノ窓幕営(18:00就寝)
《剱隊》(4:00)二俣-(9:00)コルD-(15:00)門-(18:30)二俣幕営(20:30就寝)
05日(月) 《赤谷隊》(4:30)小窓-(7:00)三ノ窓-以下小窓隊と合流
《小窓隊》(7:00)三ノ窓-(9:10)剱岳頂上-(14:30)馬場島幕営(20:00就寝)
《剱隊》(6:00)二俣-(8:00)コルB-(11:00)剱尾根の頭-(14:00)二俣幕営(20:30就寝)
06日(火) 《剱隊》(7:00)二俣-(8:30)池ノ谷出合-(10:00)馬場島合流
 -(12:00)みのわグリーンハウス(12:40)-(13:15)ホタルイカミュージーアム(14:30)-
  (15:30)魚津IC-(16:00)糸魚川IC 解散
【詳細】 赤谷隊
 
03日(土)  7:10に全員で出発。白萩川沿いの林道を行き、橋を渡った所が赤谷尾根の末端、「ここから登るのはシンドイな。」と思いながら 踏み跡を探していたら、通りかかった別のパーティーの人が「赤谷はもう少し林道を行くと池ノ谷の夏道があるから、そこから尾根 に上がるんだよ。」と教えてくれた。言われた通り林道を行くと取水口らしき堰堤が出てきた。実はこの手前に登り口があったのだ が見落としたようだ。堰堤を越えようとしたら、下で休んでいたさっきの人が「上だ。上!」と声をかけてくれた。崖のような所を 木に掴まりながらはい上がると池ノ谷への夏道に出た。ここから2ピッチほど樹林帯の急登を行く。
 汗だくになりながら踏み跡をたどり10:10に1350メートルあたりで樹林から抜け出た。ものすごい日差しと景色だ。ここからはアッ プダウンを繰り返しながら徐々に高度を上げて行き13:10に1863メートルの台地に着いた。先行は4から5パーティー。赤谷山の登 りに差し掛かっているパーティーもある。私たちは頂上の手前2000メートルの尾根上にテントを張った。時間は14:00頃。天気が良 く暑い。外で水を作ったり食事を作ったりして17:00過ぎにテントの中に入った。小窓尾根の上にもテントらしきものがいくつか見 えた。

04日(日)  2:30起床、4:35出発。今日も良い天気だ。赤谷山への登りは所々茂みをかき分けたり、岩場もあったが、ほとんど雪の斜面だった。 頂上に着いたのが5:30。まだテントが2、3張残っている。また、今まさに出発しようとしている人たちもいる。風が結構強い。 下に張って正解というのは勝手な思い込みか?5、6分して長田、加藤が上がってきた。加藤がサングラスを無くしてしまった。 ザックに付けておいたのを茂みを抜ける時にでも落としたのか?致命的だ。予備も持っておらず、仕方がないので長田がサングラス を加藤に貸し、メガネをつけてもらう。一応メガネが偏光なので何とかそれで我慢してもらう。
 5:45に出発。トラバースやらアップダウン、岩場を越えたりして、8:30に大窓手前のピークに達した。大窓には懸垂をまじえて降りた。 地元の5、6人のパーティーが休んでいた。彼らはここから雪渓を下るとのこと。ここから1時間30分程延々と登り返し、 11:06に2500メートルの大窓の頭に着いた。11:30出発。また下って登って12:55に池ノ平山、少し雲が出てきた。 小窓の王や池ノ谷ガリーを登っている人達が点になって見える。長いなあ…。
 ここから小窓までは3回懸垂下降をした。最初は30メートルほど。ハイマツに何本もシュリンゲがかかっていたのでそれを支点にして下る。 順番持ちで1時間程を要した。小窓に降り立つのにも懸垂下降を使った。15:50小窓。三ノ窓へ行くには時間がないと判断し、 ここでテントを張る事にする。小窓にはもう1張。残りは皆三ノ窓まで登っていった。のんきな私たち。19時に定時無線で山下さんに連絡を入れたが応答無しだった。 この日の夕食は炊き込みご飯と麻婆春雨。

05日(月)  2:00起床、4:10出発。予報では午後雨、雷になるとの事。計画とは違うが、本峰を踏んで早月尾根を下ろうと頭の中で考えながら小窓尾根へと雪壁を登る。 5:20小窓の頭到着。ここにテントが1張あった。いったん下り、急な雪壁を登る。先頭の長田はちょっと微妙(?)な所が出てくるとしばらく動きが止まってしまう。 6:00過ぎに三ノ窓へ下る懸垂地点に到着。木村さん達が待っていてくれた。ロープがこんがらがって懸垂に手間取り、7:00に三ノ窓についた。 木村さん達小窓隊は昨日11:00にはここに着いていたそうだ。ところが合流するはずの2隊とも来ない。今日は八峰でも登ろうかと思っていたが、 午後から天気が崩れそうなのでやめにして早月尾根から下山するつもりで私たちを待っていてくれたのだ。と言う事で本峰を目指す事にする。
 池ノ谷ガリーは階段状。赤谷隊先頭で7:55池ノ谷乗越に到着。ここから小窓隊先頭で本峰を目指すが、出発してすぐに離されてしまった。 小窓隊が早いのか、赤谷隊が遅いのか…。滑ったら絶対に助からなさそうな斜面をトラバースの後、直登して9:15剱岳頂上に到着。 頂上はガスっていて四方ぐるりの絶景は残念ながら見られなかった。9:25下山を開始する。早月尾根上部でもロープは出さず早月小屋まで2ピッチほど。 途中雷鳥がゲコゲコ鳴いていた。やはり天気は悪くなるのか?
 早月小屋に着いても小窓隊はもう先に馬場島目指して下山を続けている。赤谷尾根の台地や下部の樹林が目の高さになってくる。松尾平へは行かずにトレースに導かれて右手の沢を下った。 最後はまた木につかまったりして沢床に降り、ヤブをかき分けて林道に出た。14:30馬場島到着。テントを張っているうちに雨がポツポツと降り出してきた。 その後は無事を祝って楽しい夜を過ごした。夜中にはだいぶ雨が降ったようだった。【以上 谷口 記】

  感想  【長田】 今回、赤谷尾根から北方稜線を縦走した事で、周辺の概念が把握できとても良かったです。剣尾根やチンネ、八ツ峰、小窓ノ王、小窓尾根等素晴ら しく圧巻で、次なる夢が膨らみました。しかし、私にとって、極めて苦しい山行でもありました。メンバーの標準速度にはついていけず、 ルートファインディニングもままならならない状態でした。さらに、計画書の再確認を怠ったため最低限必要な食料や装備にも不備がありました。 これはルート研究及び体力トレーニングの不足、毎度持参する装備に対する思い込み、軽量化に対する考えの甘さ等がもたらした結果だなあと思いました。 次回からは、二度とこのような事がないようルート研究や体力トレも含めより緻密に準備し、装備においてはCLとよく再確認を取ることで 誤解を防いでいきたいと思います。総合的に見て、反省の多い合宿でありました。

【加藤】 雪の剣岳は初めてということもあり、山行前は不安で緊張もしていました。しかし眼前に広がる雄大な大パノラマを見ると自然と不安や緊張感が和らぎました。 周知の事実ですが赤谷尾根からの本峰は見事な眺望です。実際の登りは景色のように美しくはいかず、ブッシュ帯を汗まみれで歩を進めるという感じです。 結局、ハイマツには2500メートルまで苦しめられました。しかし我々以上に踏まれ続けたハイマツの方が苦しかったと思います。(ハイマツさんごめんなさい…) ブッシュ帯以外は雪も安定していましたので、残雪登山を十二分に満喫することができました。お気に入りのサングラスは剣岳に消えましたが、 登頂の記憶はしっかりと心に刻まれました!

   
  小窓隊
 
  報告   馬場島に来たのは2度目である。前回は2005年の9月。札幌から3人で三ノ窓をベースにし、チンネと剱尾根を登りに来たのであった。 その時のルートは初日に池ノ谷を詰め、その日の内に三ノ窓をベースにする予定でいたが、R10手前の巨大なアイスフォールに阻まれ、 やむなく早月尾根に転進せざるを得なかった。今回の小窓尾根は1600メートル地点まで前回と同じ道を辿る。季節こそ違うが、記憶を 呼び起こすのが楽しい。
 雷岩から取り付き、1400メートル地点まで雪はほとんど無い。急斜面の滑りやすい道は決して楽しい物ではないが、残雪が出てくると、 迷う心配が無いトレースを辿る快適な登りになり、上部岩壁の変化に富む眺望は飽きる事を知らない。 ただ、ロープを出すのが懸垂だけというのはいささ物足りないか…。条件さえ良ければ1泊2日のルート。 3日目に八峰かチンネか剱尾根を加えるとテン場の酒もより旨くなるだろう。
 今回、3日目の天候悪化と赤谷隊と連絡が取れなかった事で八峰を諦めて1日早い下山となったが、 最終日にはまた見事な快晴となり、剱の全容を網膜に焼き付ける事ができた。下山後の温泉とホタルイカはGW遠征への最後の味付け。 忘れ難い物となりました。感謝、感謝です。【以上 木村 記】

   
  剱尾根隊
 
03日(土)  思いの外雪解けが進んでいたために白萩川の通過に時間と手間を取られてしまい、池ノ谷ゴルジュの入り口に着いたのは11時になってからだった。 予定より2時間以上の遅れである。しかも天気が快晴と来ているのでこれからどんどん気温が上昇する。天気が良いのは良い事だが、 ゴルジュを通過する事を考えると気温の上昇はありがたくない。暑さによるスピードの低下。雪崩の危険の増大。悪い事だらけである。 この時点で三ノ窓到着を諦め、剱尾根隊のベースを二俣にする。
 3時前に二俣に到着。剱尾根末端のシュルンドに入ると暑さのせいで水がバシャバシャ出ている。雪を溶かさなくても水が手にはいるのはありがたい。 見上げる三ノ窓は近いが、その間にある池ノ谷はぐっと狭まっており両側の壁の上には大量の雪が不安定に引っかかっている。 どう考えても今から三ノ窓に行くのは危険すぎる。テントを張り飲み物を作っていると、案の定マッチ箱からド〜ンと言う音と共に大きな雪崩が出た。 R10の下見も出来ないので色々な飲み物を作って水分補給し食事をする。夜行の疲れもあって、7時の無線定時連絡の準備をしておきながらその前に寝てしまった。

04日(日)  2:30起床、4:00出発。暗い中をヘッ電を点けR10に向かう。大分登った頃に剱尾根上に向かうトレースに出合う。 これかなと思いながら登って行くと稜線に幕営していたパーティーが出発の準備をしていた。その横を通り剱尾根を上に向かう。 トポではハイマツのブッシュとあるが、尾根上にあるのはシラビソとダケカンバの樹林である。あれ〜っ?と思いながら登って行くとワンムーブがヤバそうな壁が出てきた。 上坂が何とかリードで突破。私はお助けシュリンゲを残置してもらってA0突破でした。この時点で取り付きを間違った事が確実になる。 その先の雪稜を越えるとコルになり、池ノ谷左俣から雪の詰まったガリーが上がってきていた。ここがR10からあがったコルEであった。(7:30)
 コルEから先はトポ通りに急なハイマツの中の踏み跡をしばらくたどると20mくらいの壁が出てくる。途中ワンムーブだけホールドが細かいが、 おおむね快適にこの壁を越す。またしばらく行くと小さな岩場が現れる。スラブに上がる所がちょっとイヤラシイので右から巻き気味に通過する。 さらにハイマツの斜面を上がって行くと一段下がったコルCになり、目の前が岩壁になる。(12:00)ここがA1で登る壁である。 残置は比較的多くしっかりしているが途中の右上しながらリッジを越えるところの大きなフレークが浮いていてホールドに使えないのがつらい。 4人がここを通過するのに1時間半もかかってしまった。ここからさらにハイマツの中の踏み跡たどるとリッジ状の岩を越え「門」への最後のピッチとなる。
 間近で見る「門」はなかなかの迫力である。門の取り付きは不安定な雪の乗ったバンドなので1パーティーしか取り付けない。津田・上坂組が取り付き、上坂リードで登り出す。 バンドに移る所やバンドが切り替わる所などで少し苦労しているが、岩も硬そうで何とかなりそうである。フォローの津田を追いかけて取り付いて見ると、結構快適なピッチである。 逆V字型のフレークをアンダーで持てば体がグッと上がり、バンドに手が届く。バンドも意外と傾斜が無く、しっかり足で立てるので落ち着いて登れる。 門の登攀が終わりドームへ続くガリーの方が岩がグズグズでいやらしかった。ドームについた時点で時間は5時となり、剱尾根上部は翌日への持ち越しとなった。 コルBからR2を下る。R4を登ってきたパーティーが2組いて一緒になった。二俣に下る途中にR10をじっくり観察。R10の位置は二俣と池ノ谷尾根末端の中間位で、 谷幅が狭くなり対岸のすっきりした三角のデルタフェースが目印の様である。【以上 山下 記】

05日(月)  昨日の疲れが、大分残っているようで4時起床の予定が5時少し前になってしまいました。 今日は、夕方から天気が崩れる予報が出ていましたので早々に準備を整えて6時25分に二俣(テン場)を出発しました。 昨日間違えてしまった、R10の取付きを確認すると大分時間的にロスしたことが、分かりました。間違わないでR10から取付けば、1日で剱尾根を抜けることが出来たと思いました。その後はひたすら急斜面を登り、R2からコルBに登りついたのは、9時を少し過ぎていました。 津田・上坂組よりスタートしました。山下・井上組が続きます。
1P目は、ちょっといやらしいバンドをトラバースします。左から回り込んでバンドのハイマツを使ってビレーしました。
2P目は、左上気味に登り右側の岩峰をへつるように進みました。ガイドブックでは、この辺りに凹角の中にチムニーがある。 と書かれていますが、今回は多分雪の下(中)に隠れているようでした。
3P目、津田・上坂組は左側を登り、私たちは右側から巻きました。出たところは稜線で、そこからは最後の尾根歩きになりました。
 ここからは、ロープを外して尾根を登っていきました。右股側に回り込んでコルAに到着しました。 最後は、岩場を登り午前11時50分に長次郎の頭に出て終了です。2日がかりの剱尾根になりましたが、 充実した山行になりました。このころから小雨が降り始めました。
 津田・上坂組は、本峰に向かい、山下・井上組は三の窓へ向かいました。予定では、 三の窓に小窓尾根隊と赤谷尾根隊が居るかテントがあるはずでしたが、辺りを見渡してもテントどころか人影もありませんでした。 小窓隊は早月尾根に向かった様ですが、赤谷隊がどうなったのか分かりません。赤谷隊がこの後三ノ窓に来た時の事を考えて、 小窓の王から降りた雪面に二俣に降りてくるようメッセージを書きました。書き上げた頃やってきた 津田・上坂組と合流して池ノ谷左股を下りました。
 午後2時半に二俣(テン場)に戻れました。着いたころから雨も本格的に降り出してきました。深夜には、雪になりました。

06日(火)  午前7時まで待って小窓・赤谷隊が降りて来なかったら私たちは下山と決めていました。 7時を過ぎても人影は見えないので下山することにしました。 朝は、冷え込み-5℃まで下がりました。おかげでアイゼンの刃が良く効きました。 池ノ谷の渓相は、入山したときと大分変わっていました。所々でブロック雪崩が起きていました。 凄かったのは、下部二俣のブロック雪崩です。距離にして100mくらい埋まっていました。 ブロックは黒く硬い岩のようでした。この雪崩に入山時、下山時に遭遇していたらひとたまりもないなと思いました。
 10時20分、馬場島の駐車場に戻りました。駐車場では、小窓・赤谷隊が待っていました。 その後、温泉に入り蛍烏賊を食べ、日本海を見ながら帰宅しました。
 一昨年、小窓尾根を登ったときに右手に見える剱尾根の険しい岩峰が見えました。 いつかは、登りたいと思っていたことが実現できたので良い山行になりました。【以上 井上 記】

   

('04-10/11)