山行報告


はじめに
  過去何回か剣から、裏銀座からと縦走をしたり、鹿島槍・五竜岳の頂上を踏んでいるが、五竜岳 から烏帽子小屋までの稜線は歩いていない。特に、八峰キレットを歩いて見たい。
 今回、登頂予定の三座(水晶岳・笠ヶ岳・焼岳)のアプローチとして、未踏の稜線を選択した。

【山域・山名等】

北アルプス五竜岳〜焼岳

【日時】

1999年08月21日夜行〜30日

【メンバー】

大内治行(単独)

【ルート】21日八王子−(急行アルプス)−
 22日神城駅〜テレキャビン上7:15〜白岳11:00〜五竜山荘11:05
 23日五竜山荘5:30〜五竜岳6:15/6:25〜キレット小屋8:55/9:15〜鹿島槍ヶ岳10:45/11:00〜冷池山荘12:00/12:30〜種池山荘14:10
 24日種池山荘5:35〜新越乗越7:05/7:15〜鳴沢岳7:45〜赤沢岳8:25〜針ノ木岳10:30/10:40〜針ノ木小屋11:05
 25日針ノ木小屋6:30〜蓮華岳7:15/7:30〜北葛岳9:20/9:40〜船窪小屋11:00
 26日船窪小屋5:30〜不動岳9:15/9:30〜南沢岳10:50/11:00〜烏帽子岳分岐11:40〜(烏帽子岳往復1時間)〜烏帽子小屋12:55〜三ッ岳13:55〜野口五郎小屋15:05
 27日野口五郎小屋に停滞
 28日野口五郎小屋5:45〜水晶小屋7:40〜(水晶岳往復50分)〜鷲羽岳9:50〜三俣蓮華岳11:15〜双六岳12:10〜鏡平山荘14:25
 29日鏡平山荘5:50〜稜線6:30〜笠ヶ岳山荘10:00/10:30〜笠ヶ岳11:40〜(クリヤ谷経由)〜槍見温泉14:55
 30日中尾温泉8:05〜中尾峠10:10/10:20〜焼岳11:00/11:30〜中の湯13:00

【詳細】08/21
   天候をみながら3日前に指定席券を購入。自由席は大分混雑していた模様。キャンセルがあったお陰かも知れない。

  
 08/22  雨
   テレキャビン乗車時には雨が降り出す。今年の山行は本当についていない。雨の中、遠見の急登 をもくもくと歩を進める。名残りの花を楽しむ余裕もない。白岳に出て左に少し下ると山荘が見 えた。日曜日のためか思っていたほどの混雑はなく、食事もよく一安心というところ。

  
 08/23  晴
   朝方、窓から見えた星は本物だった。五竜岳、剣岳がスッキリと聳えている。灌木混じりの道も すぐに岩稜の登りにかわる。気は逸るが先は長いと抑える。先行パーティーに先を譲ってもらい ながら順調に登る。体調も良いようである。登りきったピークの先が三角点のある頂上だった。 以前登った積雪期の方が楽に登れたと思うのは、現在との年の差のせいなのか?
 ここからは今山行の目的の一つ、キレット越えである。五竜の南面を所々設置してある鎖や針金 を頼りに一気に下ると、後は小さなアップダウンを繰り返しながらキレツト小屋に着く。 この先が案内書で悪場が続くと記されているルートだ。高度感はあるがよく整備されており、か るく通過する。見上げるような登りも意外に早く着く。吊り尾根の北峰よりに出る。 三角点のある南峰には軽装の登山者が大勢いた。冷池山荘に荷物を置いて南峰だけ登りにくる由。 100名山の頂を踏みさえすれば良しとする風潮は如何なものか。自分の山に対する思い入れが、現 在では古い考えなのだろうか。冷池山荘へは右手に日本海、能登半島、剣を見ながら楽しく下る。 今夜の泊まりの予定であったが、時間も早いので一つ先へ進むこととにする。
 種池山荘は、爺ヶ岳を円の底に置いて向い側に位置する。見えども着かずである。爺ヶ岳は荷物 を置いて空身で往復する。種池山荘での水絶ちした喉にビールがうまい。

  
 08/24  雨
   朝から雨。今日下山の人達は雨仕度で小屋を出て行く。今日のコースは仕較的楽なのと、危険も 少ないので雨中の行進となる。勿論、一人旅である。鳴沢岳からトンネルの上の印でもあるかと 注意して歩くが、なにもなくガックリ。
 針ノ木岳からガレの道を下り、発電機の音が響くとすぐ峠があらわれた。かって、戦国武将、佐 々成政が将兵と共に冬の峠越えをしたのを思い、感慨にふける。

 08/25  晴れ
   今度の山行で初めて槍ヶ岳を見る。雲一つない快晴だ。朝早くから蓮華岳に登っている人が望見 される。昨日の悪天侯で登れなかった人の群れであろう。 今日の日程は短いの遅立ちである。蓮華岳への緩やかな登りを行き違う人と挨拶を交しながら、 気持ち良く歩む。蓮華岳は駒草の群生地と聞いていたが、その通り周り中駒草だらけという感じ。 蓮華の大下りと称されるガレの下りを一気に降りる。振り返ると、遥か上に蓮華がある。登りに なると背中から太陽の熱を受けて厳しいだろうと考えてしまう。
 北葛乗越までは所々腐りかけた木の梯子、ワイヤーがあり、それを頼りに下る。乗越から見上げ る北葛岳は、遥かに遠い。樹林で夏の日差しを避けられるのが救いで、七倉岳から穏やかな尾根 道を辿ると船窪小屋だった。途中で逢った登山者の話では食事に感激したとの事。今夜が楽しみ だ。久しぶりの太陽に、すべての荷物を虫干しする。おてんとう様の下で飲むビ−ルは、格別の 味である。

  
 08/26  晴/雨
   小屋から見る今日のコースはなかなか厳しそうだ。昨年の雨で崩壊したルートはきちんと補修さ れたそうで、地元の方々のご苦労に感謝する。這松帯を切り開いたり、危険箇所はロープ、丸太 で補強してある。南沢岳から烏帽子岳方面を見下ろすと、草原の中に池塘が点々と見え美しい景色だ。烏帽子の分 岐に荷物をデポし、空身で烏帽子岳を往復する。岩の積み重ねの魁偉な山だ。少し前まではおそ らく見向きもされない不遇な山だったのではないかと思う。
 烏帽子小屋を過ぎる頃より雨がポチポチ来はじめる。時期が違いせいか、天幕は二張りしかなく さみしい。既に霧で何も見えない。風も強くなったが、今日は合羽を着ないとくだらない依怙地 をはり身体が冷える。小屋の宿泊手続きでは手がかじかんで字が書きずらかった。

  
 08/27  雨、風共に強し
   夜中に小屋が揺れるほど風が吹き、何度か目覚める。明るくなっても風雨は収まらず、早々に停 滞を決める。サボリの決断は早い方が良い。小屋のご主人の好意で乾燥室のストーブを焚いても らい、昨夜テントをつぶされた名古屋の青年と雑談で過ごす。

  
 08/28  強風すぐに雨
   風は強いが雨はないので出発する。霧で身体が濡れるのでまた合羽の世話になる。野口五郎を過 ぎる頃より雨も降り出す。いまさら戻るわけにもいかず、進むのみである。東沢乗越からの登り は意外なほど短かった。水晶岳往復はきつい登りもなく助かった。
 ワリモ、鷲羽岳と忠実にトレースし三俣山荘に着く。山荘からは、沢のようなガレが上に向かっ ている。三俣蓮華岳は登下降が同じ道だった。霧で視界がきかず只歩くのみである。 双六岳は上り、下りといくつもの踏み跡があり迷う。上へ上へを選ぶ。下りが凄い。えぐれた溝 が川になっており、もう全てがビショ濡れ。双六小屋は立派になり、今昔の差が大きい。
 裏銀座のメインルートから外れ、今回の第二の目的の稜線に足を踏み入れる。きつい登りがない 様にと祈りながら歩く。軽い荷物でも長期の縦走は疲労がたまる。笠ケ岳への稜線から左におれ、 鏡平山荘へ下る。明日の登りを考えながら。 山荘のある場所は池があり、草原の中で晴れていたらと無いものねだりをしてしまう。 混雑しているので一枚の布団に二人と言われたが、夜になっても客は来ず快適に寝る。ただし、 一階と二階はひどく混んでいた。因みに、単独行者は三階であった。

  
 08/29  晴
   空は晴れているが霧が低く槍、穂高の勇姿は望めない。残念!
 昨日悩んだ稜線までの登りは苦もなく着いた。灌木の水滴で濡れるのが嫌で、セコク遅立ちした のに先行者が遅く効果は無い。笠ヶ岳への稜線で暑い合羽を脱ぎ、夏の太陽を浴びながら稜線漫 歩を楽しむ。槍、穂高と良く見え、あれがキレット、ドーム、奥穂高、ジャンダルムと嬉しくな る。秩父平はお花畑で天幕を張って、ビールを飲みながら一日中穂高を見て居たい所だ。岩の積 み重なったピークが抜戸岳だ。空身で往復する。笠ヶ岳山荘前のベンチを借りて、ビールで渇き を癒し昼食を摂る。
 笠ケ岳の頂上から長かった縦走路を振り返るが三俣蓮華、薬師に阻まれ見えない。笠新道ができ てから、クリヤ谷のコースを利用する人は極端に減った由。確かに、眺めてもずいぶん長い。躊 躇していてもしようがない、計画の実行のみである。前半は崩れた岩稜が続き、樹林帯になって からも下りは延々と続く。西穂高のロープウェイの音が聞こえるが、遥か遠くに見える。 車の音が混じりだしたら槍見温泉の赤い屋根が目に入った。中尾温泉の民宿で、久しぶりに露天 風呂で身体を休める。

  
 08/30  晴
   宿のご主人の好意で、登山口まで車で送ってもらう。
 樹林帯の涼しい道が続く。樹林がきれてすぐに中尾峠に着く。昼寝でもしたい気持ちの良い草原 だ。そこから様相がガラリと変わり、溶岩の山になる。上部では未だに水蒸気が吹いており、風 の具合で硫化水素の臭いがする。現在登れるのは北峰のみで、南峰には道が無い。北アルプスの 縦走もあとは下るのみである。笠ヶ岳がでかい。
 中の湯への道は良く手入れがされており、とても歩き良い。中の湯が移転したのを忘れ、バス通 りより大分上に出てしまい25分も歩くはめになる。


('04-01/16 リニューアル)