山行報告


【山域・山名等】

越後山地 利根川源流
【日時】

1997年08月08日(金)夜行〜12日(火)

【メンバー】

CL井上徹三、池崎友行、桐沢輝治、和田善次

【ルート】8日(金)横浜駅22:30/23:08→臨時快速尾瀬・谷川号→水上駅26:32
 9日(土)水上駅6:30〜車〜八木沢ダム7:40/9:05〜渡船〜バックウォーター9:35→水長沢出合10:05→水量計10:22/10:40→又衛門渕11:20→越後沢出合16:05 
 10日(日)越後沢出合6:50→ヒトマタギ7:50→40m泳ぐ淵9:30→滝ガ倉沢出合11:20/12:15→定吉沢出合15:52
 11日(月)定吉沢出合7:00→大利根滝11:00→ハト平11:50
 12日(火)ハト平5:45→ゴルジュ入口6:35→10mフェース8:10→深山滝8:35→水上滝10:35→三角雪田下(昼食)10:50/11:55→稜線12:15→大水上山12:25 →稜線(着替)13:00→丹後山13:25→林道合流15:32→十字峡山小屋16:00


【詳細】08/08(金)
  ・台風の動きが気にかかるが、北上して日本海側を通過しなければそんなに影響がないとのこと、とにかく、八木沢ダムまで行って判断することで車中へ。なお、池ヶ谷氏が不参加のため、黒部 の経験がある桐沢氏に頼み込んで参加してもらったが、1人当たり20kgを超す荷物と3日間以上を谷の中で泊まる行程を考えると、4人は正解だった。

  
 08/09(土)晴れ
  ・水上駅からはバスを利用し、途中の大芦バス停留所で高柳氏と合流する予定であったが、暁山岳会(相模原市)の方々を早く送ったとのことから、我々も高柳氏の息子さんの車でダムまで送っ てもらい、時間を大幅に短縮できた。
(注)水上駅からバックウォーターまでの車代、渡船代は人数に関係なく今回は3万円。 ただし、乗船人数は荷物との関係上5人くらいが限度か。
・八木沢ダムでは釣人の車の多さにピックリ。湖上を渡ってくる風に吹かれながら朝食を食べ、渡船の待ち時間を利用して井上氏は釣人からの沢の情報収集に、和田はえさの赤とんぼ捕りに余念 がない。待つことようやく高柳氏の船が到着。夏山の岩場の上で吹かれる風とは一味違う船上の風に酔いつ満喫しつつ高柳氏から越後の山々や林道の状況(健脚の人でも1日強はかかるとのこ と)を聞きながら、小穂口沢との合流点の台地の下に到着。高柳氏は我々の年齢を心配?(4人で220才)し、とにかく、何時でもよいから下山したら連絡してほしいとのことで、思わず頭が下 がる。
・途中で浦和浪漫の方々の合宿に出合って挨拶。水量は思ったよりも少なく、徒渉は南アルプス信濃俣河内沢の時の方が大変だった。シッケイガマワシは雪も落ちており泳ぎを交えて水線どおし に行ったが、巻渕は泳いで左岸に上がり、渕をトラバースして直上するところでザックの頭が引っ掛かり、ザイルを使ってザックを引き上げてもらう。
・越後沢出合まで徒渉をくりかえしながら行くが、幕場は沢出合の上30m位の所の台地にテント2〜3張は可能であるが、薪が乏しい。
・途中からサオを出したもののハヤが多く、岩魚は今一つであった。また、岩魚が滝を飛び越えようとジャンプしており、網ですくおうとしたが徒労に終わる。夕食は岩魚の代わりに池崎氏が用 意してくれたうなぎに舌鼓みをうち、一日を終わる。

  
 08/10(日)晴れ
  ・台風の影響はなく気分は上々。しかし、今回の最大の悪場であるオイックイを越えないことには先が見えず、皆緊張した面持ち。幕営からヒトマタギまでは右岸のあるかないかの踏み跡をナタ メを確認しながら進み、一且剣ガ倉沢の出合の下の沢床に降り、出合から更に右岸の巻き道に戻ってヒトマタギに下る。井上CLの薮こぎの確実さに感謝。ヒトマタギの上部20m位の所から左岸の 巻き道をいくこととなるが、比較的踏み跡もしっかりしており、小沢の手前から懸垂下降で沢床に降りる。途中本流にザックを流しながら下る2人パーティがいて、今日の釣果もかんばしくな いのではないかと不安になる。
・滝ガ倉沢出合で昼食とし、テント場は台地の上であり安全性は高い。
・オイックイには4ヶ所に雪渓があり、@越後コボラは雪渓の下流にある流木のダムの左を通り、昼も過ぎてしずくが雨のように落ちてくる下を井上、池崎、桐沢、和田の順で行くのだが、いつ 落ちてもおかしくない雪渓の下はどうしても早足となり、最後は3人一緒になって井上CLに小言を頂く。Aつ目の雪渓は、左岸の沢と合流後に左にほぼ直角に曲がり、暗くて先が見えないため に何とも気味が悪い。入口から見た感じでは雪も厚く落ちそうには見えなかったものの、出口の雪は今にも落ちそう。50m先の淵は右の岩をショルダーで越えてザイル使用で泳いでもらい、その 上部の淵で回収中に、ドォーンとすごい音がしたかと思うと20cm位水位が上がって逆流し、スーと水が引く。思わず時計を見ると我々が下を通ってから20分を経過しており、この時ばかりはホ ッとする。Bつ目は長くはないものの薄く、いっ落ちてもおかしくないアーチ型が青空に映え、眺める分には申し分ないがヒヤヒヤ。Cつ目は腹をくくって、皆足早に通り抜ける。
・定吉沢幕場は本流の上50mの台地の安全な所で気持ちが良く、テント2〜3張は可能。
・オイックイを無事に越え、裏越後沢の魚止めの滝で今晩の岩魚を釣り、前日とは様変わりの刺身、塩焼き、みそ汁、ムニエルを食べることができて山の神に感謝。また、朝、出かけに幕場の下で 初めて尺を超える岩魚を釣り上げることができて感激。

  
 08/11(月)晴れ
  ・定吉沢出合の最初の滝は右に巻道があるが、悪そうなので泳ぎ、その後の定吉沢ゴルジュ帯は水線どおしに行く。魚止め滝は左を巻き、十九ノ沢は左岸岩場をアンザイレンしてやや右斜上(途 中にピン有り)して、ヒョングリの下に懸垂下降する。
・大利根滝は左岸フェースをザイルを使用して登り、小沢までトラバースして河床に下る。前日までは沢の中を、本日は滝登りが多くなり、この後の岩登りは3級程度。
・天気もよく、幕場は明るく気持ちの良い所であったことから本日は休養日として早々に幕営。前日までにビールを飲み干してしまい、休養日としてなんとなく物足りないと思っていたら、なん と500CCのキリンビールー番搾りが3本草むらに有るではないか。一瞬、「ほんとかいな」と思わず呑み口を確認する。後は釣った岩魚をおかずに、一同おもわぬ贈り物に感謝。天気図上は台風 が低気圧に変わり、寒冷前線の影響からガスが発生し、夜は一晩中稲妻が光り、雨がテントを打つ。

  
 08/12(火)霧後雨
  ・天気が悪くならないうちに沢を抜けるべく早く出発したが、幸いなことに登るごとにガスも晴れて尾瀬、平ケ岳、上越の山々の展望がひらけ、本流遡行のために偵察にきた山々のことが思い出 される。
・10m左フェースはザイルで直登。人参滝は右岩稜〜草付〜濯木トラバース〜下降。長丁場の最後の日であり、年齢面から安全を第一として、深山滝から赤沢滝、水上滝はそれぞれザイルを使用し、 トップ井上CL、セカンド池崎氏、桐沢氏がザイルを2本着けて時間を節約。
・三角雪田の下部草付きで冷えたそうめんを食べ、三角雪田ではキンキンと冷えた最後の水を飲み、夏真っ盛りの稜線にようやく到着。大水上山頂で山の神に今回の遡行、岩魚の恵み、なにかとお 世話になった高柳氏への感謝、一同の無事下山を祈念して日本酒て乾杯。
・丹後山から林道合流点までの急板は、雷の稲妻とにわか雨に追われ、疲れた足でようやく踏ん張りながら下る。林道では雨は上がったものの、群がるアブの大群に閉口する。
・ようやく到着した十字峡山小屋には電話がなくてタクシーが呼べない。さりとてまた降出した雨の中を1時間強も歩く元気はない。そこで、下山の途中で追い越した中高年の一行(千葉県野田市 から来た登山者)のうち、我々が本流遡行と知ってすかさず、「オイックイはどうだった」と尋ねたことを思い出し、一行を待っていたバスの運転手と交渉して、電話のある所まで乗せてもら う。車中では、今回の山行やかつて源流を登った様子などを話す。
・バスを降り、それぞれが無事下山を報告し、六日町の露天風呂に一泊して疲れをいやす。

  
 [総括]
  ・長丁場の下で今回は天侯に恵まれ、また、今年は雪渓の状態がシッケイガマワシは落ちており、オイックイも雪渓の下を通過できて巻くこともなかったこと、更には、上部になかったことから 例年に比べて恵まれていたのではないかと思われる。
・滝ガ倉沢出合を出てから一時的に水が濁り、多分雪渓が落ちたのだろうと思っていたら、案の定、オイックイの一番目の雪渓から沢にブロックが落ちていた。通常ブロックが落ちると水流がさえ ぎられてダムとなり、その後に鉄砲水が出るもの(子供の頃によく雪でダムを作って遊んだ経験から)だが、幸いなことに水流をさえぎるものではなかったらしい。
 なお、雪渓の下部には流木のダムができていたが、この流木のダムは新しく暫くは持ちそうであるが雪渓の全部が落ちてダムとなって鉄砲水となると、ダムが破壊されることも想定されるこ とから、雪渓がないと確認できている以外は、越後沢出合からはなるべく巻き道を利用するなり、水線どおしの場合でも水位が低くなった場合に逃げる場所を常に考えて行動する。また、雪渓の 比較的落ちついていると思われている朝方に通過する日程調整も必要。

('02-11/16)