山行報告

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【山域・山名等】

北アルプス剱岳・源次郎尾根〜チンネ〜八峰Y峰

【日時】

2007年08月10日(金)夜行〜08月15日(水)

【メンバー】

CL井上哲也・古関正雄・津田 暢・安部浩章・石綿健一・加藤 優・中村裕子

【ルート】
10日(金)各車集合場所(21:00)-(1:30)安曇野ガラス工房
11日(土)安曇野ガラス工房(6:30)-(7:30)扇沢(8:00)-(8:55)室堂(9:30)-(11:55)別山乗越-(12:40)剣沢小屋-(15:00)真砂沢BC
12日(日) 源次郎尾根隊 真砂沢BC(5:00)-(6:00)源治郎尾根取付-(9:40)T峰-(11:40)U峰-(12:50)剣岳頂上
成城大ルート 真砂沢BC(5:10)-(6:15)源次郎尾根取付-(8:45)成城大ルート取付-(9:05)登攀開始-終了(12:00)
中谷ルート 真砂沢BC(5:00)-(6:30)中谷ルート取付-(7:00)登攀開始-終了(12:06)
13日(月) 久留米大ルート 真砂沢(5:00)-久留米大ルート取付き(8:45)-登攀開始(9:00)-Dフェースの頭(11:30)-熊の岩(16:00)
RCCルート RCCルート取付き(11:30)-Cフェース頭(13:30)-最初の懸垂点(14:30)-Aフェースの懸垂点(16:30)-熊の岩(18:00)
剣稜会ルート ルートが渋滞していた為、省略
14日(火) チンネ左稜線 出発(4:10)-三の窓(5:50)-チンネ左稜線取付き(6:10)-登攀開始(7:50)-終了点(15:20)-真砂沢BC(18:30)
中大ルート 
15日(水) 真砂沢ロッジ(6:00)〜剱沢キャンプ場(8:30)〜別山乘越(9:45)〜雷鳥平(10:50)〜室堂(11:45)〜 扇沢無料駐車場(14:10)
【詳細】 08/11(土)
   前日の夜、車3台で出発しました。安曇野ガラス工芸の駐車場で仮眠をとり扇沢の無料駐車場に車を停めました。 7:00発のトロリーバスに乗って一路室堂まで向かいました。室堂は、登山者や観光客ですでににぎやかでした。
 重いザックを背負ってまずは雷鳥平を目指しました。黒部ダムの駅で時間があったのでザックの重さを量ったところ、 石綿29kg・津田27kg・井上24kg・安部24kg・加藤24kg・古関23kgありました。その後、室堂で水を汲んだので約1kg 増えています。雷鳥坂の急登は、かなりきつかったです。天気がよすぎて汗が吹き出ました。時より吹くさわやかな 風が気持ちよかったです。
 剱沢キャンプ場でお昼にしました。そこでは、別山の岩場を登攀しているパーティーが見えました。 登山届けを提出して真砂沢に向かいました。剱沢の雪渓に入ってからは、平蔵谷や源次郎尾根、成城大ルートなど を観察しながら下りました。15:30ほぼ予定通りに真砂沢ロッジに到着してテントを設営しました。(記:井上哲也)
  
  08/12(日)晴れ
  ●源治郎尾根(安部浩章・加藤 優)
 源次郎尾根は長次郎谷と平蔵谷に挟まれた明瞭な尾根である。尾根ルートの取付きも踏み跡がしっかりと付いており、 一目瞭然。(毎年のことかどうかは分からないが、今年は救護用のソリが取付き部に設置してあった。)
 取付き部は草付きであるが、すぐに樹林帯に突入。ハイマツ中心の低木帯で、ザックがひっかかり非常に登り辛い。 このような状況がT峰ピーク直下まで続き、正直うんざりする。T峰ピークからコルまではクライムダウンする。 コルからはT峰と同じようにまたハイマツ帯をU峰ピークまで登り返す。U峰ピークからコルまでは懸垂下降となる。 支点は富山県警がしっかりと整備しており全く問題ない。(50mロープ1本でも可)懸垂下降が終わると、 やっと本峰への登りとなる。
 本峰への登りはガレ場が多く、ルートファインディングを慎重に行わなければ、落石を頻発させてしまう。 しかし、尾根上には踏み跡がいくつも在りルートが不明瞭。どの踏み跡が正しいか判断に迷うときは、なるべく尾根 の左側を通っているルートを選ぶと良い。そうした調子で登っていくとすぐに頂上にでる。
 下降ルートは長次郎谷を選択。頂上から長次郎谷のコルまでクライムダウン。かなり急峻なところが多いが、 トラロープやお助けが各所に設置されているのでそれらを利用すれば比較的安全に下降することができる。 長次郎谷のコルからは直下まで雪渓がきているので、すぐにアイゼンを装着して長次郎谷の左俣を下降。 雪渓はとぎれることなく、剣沢の出合まで続いている。出合からは登り同様のルートを真砂ロッジまで下降。(記:加藤 優)

●源次郎尾根T峰上部岩壁成城大ルート(井上哲也・石綿健一)
 前日に確認した尾根の末端には、ルートが右側(上部)左側(下部)の2本ありました。既に2本とも何パーティーかが 取付いていて渋滞していました。今日は、安部・加藤組が源次郎尾根を剱岳山頂まで登るので途中まで同ルートです。 安部さんが躊躇なく左側(下部)に取付きました。私たちも後に続き同取り付きから尾根を登り始めました。先行パーティ ーは、初心者がいるらしく所々ロープを出しているので一行に先に進みません。ゆっくりと尾根を登れたおかげで色々と 周辺が観察できました。
 成城大ルートへは尾根をトラバースしなければなりませんが、そのポイントはトポどおりで右のルンゼの上部終了点 と登山道が交わった先のコルにありました。ここからは、上部岩壁がよく見渡せました。 すでに成城大ルートの核心部(4P)を登攀している3人パーティーがあり、名古屋大ルートにも人が見えました。 踏み跡を中央バンドに向かってトラバースしますが、途中から藪漕ぎになり足元が悪いため細心の注意が必要でした。 その後、中央バンドを上部に詰めて行きますがトポに記載している取り付きに似ている箇所があります。ここは、 トラバース地点からもはっきり確認できました。私たちは、しばらく状況を観察しましたがやはり違うと思い更に上へ 進みました。そうすると今まで隠れていた成城大ルートの取付きがありました。
◆1P目:石綿リード(25m)
  凹角からカンテを登ります。特に難しくはなく、谷川の中央カンテのようなピッチでした。
◆2P目:井上リード(25m)
  カンテなのかフェースなのかはっきりしない岩場を登ります。
◆3P目:石綿リード(30m)
  ここからは、花崗岩の快適な岩場になりました。フリクションもよく効きました。20mのピッチでしたが、 石綿君がロープを伸ばしています。ビレイしているところからは、岩の陰になり登攀している様子は見えませんでした。 25mほどロープが出たところで石綿君が現れました。彼は、4P目のトラバースに入ってしまいました。私が声を掛けて4P目 の最初のクラックの下でピッチを切りました。私が同ピッチをフォローで行くと20mほどで右側にテラスがありました。 石綿君に聞くとハーケンが1本しかなかったので先に進んでしまったようです。
◆4P目:井上リード(最初のクラックから)(40m)
  狭いバンドから最初のクラックを直上します。少し先の右側にハーケンが見えましたが、どうしても出だしにランニング が取りたい状況でした。クラックにカムを入れようとしましたが、狭くて私が携行していたカムではサイズが合いませんで した。細かいホールドやスタンスを拾いながら突破します。上に行くと左手にピトンが上に向けて連打されています。 その方向に行くとダイレクトルートなので左側にトラバースしました。1手1手に緊張が走りました。A1ルートだと思って いましたが、A0で何とかトラバースできました。2つ目のクラックに入りましたが、支点がありませんでした。今度は、 カムが決まりました。このピッチでは、合計3個のカムを使用しました。クラックを登って4P目は終了でしたが、3P目 を長く伸ばしていましたのでそのまま5P目のフェースを登りました。出だしX級のピッチですが、フリクションがよく 効いて快適に登れました。そして5P目中間にあるテラスでピッチを切りました。
◆5P目:石綿リード(中間テラスから)(45m)
  少し壁を登り、ハイマツ帯に入ります。ハイマツを抜けると白い岩がありその下には、しっかりとしたビレイ点が 見えました。(名古屋大ルート方向) 私たちは白い岩の横でピッチを切りました。
◆6P目:井上リード(50m)
  チムニーのようなルンゼを抜けてロープいっぱいで尾根に出ました。
 下山は、尾根を下り中間で1回懸垂を行いました。下って行くと自然と源次郎尾根の右側(上部)の方に出ました。 最後の降り口で念のため懸垂して降りました。
 成城大ルートの核心部(4P目)は、弱点をよくついた好ピッチだと思います。次にどう行こう?と考えて進んで行 くと自然とそのルート取りになりました。花崗岩の岩もフリクションがよく効いて楽しかったです。(記:井上哲也)

●源次郎尾根T峰下部岩壁中谷ルート(古関正雄・津田 暢)
 5:00 出発。天気は快晴。農大生たちとともに雪渓を歩いていく。ひと登りで剱沢から分かれ平蔵谷への登りに入る。 農大生たちは源次郎尾根に取付いていった。平蔵谷を先行していく2人が少し気になったが、入山日に確認しておいた 顕著な岩溝を見上げながら取付きへと詰めていった。下から見上げても大まかなラインが分かり、まず間違うことは無 いと思う。
 雪渓からの乗り移りもベルクシュルントはまったく開いておらず容易に上陸。一昨年よりも雪が多いせいだろう。取付 で装備を整えるが非常に寒かった。
◆1P目(津田)
 7:00 指がかじかむ中、取付く。残置はなくカムでランニングをひとつ取り、草付バンドを右上すると ビレイ点がある。(ちなみに先行の2人も同ルートだったが取付が分からず雪渓を登りすぎて我々の後続となった。 この2人は1ピッチ目ノーザイル。)
◆2P目(古関)
 人工ラインを快適に登る。古関さんはいまいち調子が出ない様子。
◆3・4P目(津田)
 ビレイ点からは左上気味にトラバースしていく。凹角ラインが上がってくる辺りのトラバースが一手悪いが、 確実にランニングを取っていけば問題ない。(凹角の草付クラックも残置はそこそこある様子。1〜2つカムを決めていたが、 なかなか悪いとのこと。この凹角ラインを登るとさらに上に残置が続いておりそちらにつられて登ってしまうようだ。) 傾斜が落ち草付を左に回りこむとビレイ点があり、さらに越沢の滑り台のようなピッチに出る。右にコーナークラック が走っているのでレイバック気味に登る。小さめのカムがあるとなお心強い。クラックが切れる辺りで左のフェースに移り 一段上がるとビレイ点。落ち着いてホールドを探し思い切って乗っ越そう。これが4ピッチ目になるが3・4ピッチまとめ て登ってしまった。
◆5P目(古関)
 長いトラバースルート。ピンは適度に打ってあり、ボロボロのシュリンゲが下がっているのが見える。 残置を使わず自分でシュリンゲをかけていこう。ランニングの取り方も考えたい。古関さんも調子が出てきたようでザイル の流れも美しい。一箇所2mほど下がる部分がある。大岩溝が頭上にくる辺りからルートは上へと進んでいく。大岩溝の 最下部の大岩につき当たるとルートは右と左に取れる。古関さんは左上のチムニーのような部分から、さらに左の岩へ移 り数m登ると細いバンド状。支点を補強し、そこでピッチを切る。
◆6P目(津田)
 右上フェースが10m。左のコーナーにも良いホールドが取れる。右から上がってくる脆いルートと合流し 浮石だらけの洞窟テラスでビレイ。
◆7P目(古関)
 ジリジリとザイルを伸ばし、解除のコール。さらに「確保条件が悪いので絶対落ちないように」とのこと。 初めと終わりがフリー、中間は2〜3手アブミを出して登った。おそらくチムニー状の左壁の部分である。崩壊も進んでい るのだろうか、トポによってもルートが多少異なり判然としない。トンネル状岩溝の真下までザイルを伸ばす。ビレイ点も はっきりせず、浅打ちこんにちはハーケン2枚と岩角に今にも外れそうなシュリンゲをかけて古関さんはビレイしており思 わず笑ってしまう。一段下のリングボルト2本のほうが安心だと思うがCS上でビレイすることになるので、それはそれで 怖い気がする。
◆8P目(津田)
 まさに地形の妙といったところでワクワクする。岩溝内のフェースを右上し、CSで作られた暗いトンネル を抜けると、明るいリッジに出る。岩は硬く快適で思わず吼える。リッジを越えたところで切る。奥のハイ松帯へは進まない。
◆9P目(古関)
 右手のスラブをリッジ上の灌木めざし登ると終了点である。
 ロープをたたみ、視界が開けるとダイヤモンドフェースが眼前にひときわ大きく現れた。下部よりも岩も硬く、 ブッシュも少なそうな壁である。次回の課題にしたい。ここからリッジ通しに結構なハイ松漕ぎになる。余計なガチャはしまおう。 踏み跡ははっきりしており、一汗かくと縦走路にとび出す。成城大ルート等への分岐でもある。一本立てていると上から 井上哲・石綿パーティーが降りてくる。
 13:30下降開始。3回の懸垂を交え、15:30源次郎尾根取付から雪渓へ。ずいぶん下ったところで、先を歩く安部・加藤パーティー とも合流。16:15真砂沢着。
 岳人『日本の大岸壁をフリーで登ろう』という特集の第1回目で紹介されたルートである。かなり魅力的に紹介されているので、 ついその気になってしまうが安易な気持ちで取付くべきではないと思った。小川山等でトレーニングをつめばオールフリーで いけないことも無いと思う。やはりハーケン主体の支点、崩壊の可能性を含んだピッチもあって落ちない落ちられないルート である。人工も頭に置いて取付いてほしい。全体を通してカムも有効である。中谷・辰野、両氏の巧みなライン取りを楽しん でほしい。(記:津田 暢)

  
  08/13(月)晴れ
  ●八ツ峰Y峰Dフェース久留米大ルート(井上哲也・津田 暢)
 今日は14日にチンネ左稜線を登攀するためY峰登攀後、熊の岩にビバーグの予定で出発しました。一泊分の食料 やテント装備があり、長次郎谷を登るのは大変しんどかったです。
 長次郎谷の露岩に装備をデポして久留米大の取り付きに向かいました。先にCフェース剣稜会ルートの取り付き に着いていた古関さんより「11番目だ!」と報告があり今日のCフェースは大渋滞だったようです。私たちは、大 渋滞を横目に久留米大ルートへ向かいました。
 Cフェースの基部を回り込みDフェース側に行こうとしましたが、変な形で雪渓が張り出していたため別のアプロ ーチルート探していたところ、後続パーティーが「行けるよ!」とあっけなく抜けてしまいました。
 そのパーティーは、前日に富山大ルートを登っていて今日はCフェースの予定が混んでいるため久留米大ルート に変更したそうです。そのパーティーも始めてらしくルートの取付きを探していました。私たちも一緒になって探し、 ここだろう?ということになり先を譲っていただき準備をしました。
◆1P目:津田リード(30m)
 右側から取付き登り始めましたが、中々手ごわく後続パーティーの「左からのがやさしいよ」と言われ左から登り 始めました。カンテ気味の岩を登るとフェースになりさほど難しくないピッチでした。トポの30mを目安に津田君は、 ピッチを切りました。
◆2P目:井上リード(35m)
 津田君からここから先があまり見えないのでわりとビレイしやすい場所でピッチを切った。と報告を受けました。 フェースを5mほど登ると傾斜が緩みそこにはシュリンゲが巻かれたビレイ支点がありました。そこがトポでいう1P目 もしくは2P目の終了点になると思いました。そのまま直上していくとハーケンが3,4本打たれているポイントがあり、 一旦ピッチを切ろうとしましたが残りのロープが15mほどあったため先に行きました。少しあがると左に回りこみ、 そして右にトラバース気味に上がって核心部の凹角フェースのルートが読めました。凹角に入る手前にビレイ出来そう なポイントが見えましたが、津田君から「もう核心部ですよ」と声がかかり左に回りこむ手前でピッチを切りました。
◆3P目:津田リード(45m)
 左に回りこみ少し上がったところからアブミで右上していきました。更に凹角に向かってトラバースを始めたところ 後続パーティーから「そっちじゃないよ!」と声がかかりました。私たちが核心部だと思っていた場所は、そうではあ りませんでした。津田君は、トラバースを止めて垂壁を直上しました。40mちょっとロープを伸ばしてピッチを切りました。 私はフォーローなのでトップがアブミを使用したポイントはA0とフィフィを使って登りました。垂壁を乗越した所に ビレイ支点がありました。この支点を見て先ほどのシュリンゲが巻かれたビレイ支点が2P目の終了点だったと確信しました。
◆4P目:井上リード(50m)
 50mいっぱいにロープを伸ばして潅木でビレイしました。
◆5P目:津田リード(5m)
 すぐDフェースの頭に出ました。
 下山は、八ツ峰の登山道を下りました。Cフェースの頭を過ぎたところで古関・加藤組が見えました。そこでコール を交わして状況報告を受けると、Cフェース剣稜会は混んでいて途中で懸垂して降りるパーティーや別ルートに変更し たパーティーがあり古関・加藤組が最終パーティーでした。同じルートを登攀する予定だった安部・石綿組みは、 RCCルートに変更したと教えていただきました。Cフェースの頭を過ぎてしばらく踏み跡を降りていくと懸垂ポイント があります。その真下にシュリンゲが巻かれた懸垂ポイントがあります。2年前に同ルートで下山しているので真下に は降りずに右より(Aフェース側)に下降しました。次は、50mいっぱいでAフェースの基部に降り、少し回りこんで5,6 のコルに到着しました。そこからガレ場を下り、デポした場所に戻りました。
 当初は、Dフェース登攀後にAフェース中央大ルートを登る予定でしたが疲労と明日のチンネを考えてDフェースのみとしました。
 久留米大ルートは、判然としませんでした。雪渓上から岩に取付いているので最初のピッチが途中からのスタートになりました。 そのことを理解した上で登攀していればもう少し楽しめたような気がします。ルートのトレース登攀に少し反省しました。(記:井上哲也)

●八ツ峰Y峰CフェースRCCルート(安部浩章・石綿健一)
 4時過ぎに真砂沢ベースを出発し全員で長次郎谷を登る。熊の岩までテントを上げるため15キロ近く背負っておりつらい。 すぐ前を農大山岳部の一年生がアイゼンなしで登っている。時々上級生の檄が飛び、こちらまで緊張する。
 7時過ぎCフェース下部の岩陰に荷物をデポし、剣稜会ルートの取り付きに並ぶ。我々が最後で1パーティーおいてその前が古関、加藤組、 その前にはさらに3パーティー位取付いている。我々以外はすべて熊の岩から来たものと思われる。順番待ちの列は動く気配無く 10時を過ぎてやっと古関、加藤組が取り付く。しかしその後も壁の中で順番待ち状態でいっこうに進まない。11時を過ぎて我々は、 剣稜会ルートをあきらめRCCルートに転進する。
 剣稜会ルートの取りつきから40メートルほど上がった所が取り付き。石綿君がトップで登る。下部はスラブ。あまり登られて いない為か浮石が多い。2ピッチ目からはハイ松帯に入り、ハイ松帯と凹角の間のフェースを登ってゆく。残置ピンは少なく ハイ松の根元に支点を取って登る。ホールドは豊富で何処でも登れる感じである。2時間弱、4ピッチでCフェースの頭に出る。 古関、加藤組はまだ登っている。
 ロープを巻いていると、登っている古関リーダーから石綿君に、『懸垂点は奥の方だ。覚えているよな!』石渡君すぐに『ハイ』。 何の心配も無くカラビナの残置された立派な懸垂支点を見つけ下りる。2ピッチ目半分位下りた所で『安部さんまちがっていました。 三の窓の方に下りてしまいました。』ガーン。時間は3時過ぎ。一瞬嫌な予感が頭をよぎる。上のほうでは古関リーダーが何度も 登り返せと怒鳴っている。ハイ松帯にバイルを突き刺して登り返す。30分ほどかけて元の懸垂支点に戻り、そこから踏み後を追う。 Aフェースの頭の下の懸垂点を見つけ、5.6のコルに降り立ったのは5時を過ぎていた。
 熊の岩では井上さん、津田さんが心配して待っていてくれた。まさに陽が落ちようとする時、2人で石綿君の上げてくれたビール を飲む。少し苦かった。夏のピークの時期八つ峰に取り付くのに熊の岩ベースは当たり前になってきているようだ。 前日源次郎尾根から見た所20張りのテントが設営されていた。(記:安部浩章)

●八ツ峰Y峰Cフェース剱稜会ルート(古関正雄・加藤 優)
 長次郎谷の雪渓からY峰Cフェース基部に取付く。夏休みのピーク時ということで、この基部で1時間の順番待ち。
◆1時間後、基部の突端部下から左上するバンド沿いにテラスまで登る。階段状になったスラブで快適に登ることができる。 快適に登ることができたが、テラスでまた順番待ちとなり1時間停滞。
◆2ピッチ目は登り出しの一段上がったところにクラックがあるが、難なく登れる。ここを越えると、平凡なフェースで、 すぐにテラスに出る。
◆3ピッチ目も渋滞していたためこのテラスで、また30分程度の休憩。3ピッチ目は快適なフェースを左上、フリクション が非常に良く効く。ビレーポイントは狭いがしっかりとある。
◆4ピッチ目は切り立ったリッジをトラバースぎみに登っていく。このピッチでCフェースの頭まで登りきろうとしたが、 ロープが足りず、中途半端なレッジでピッチを切る。
◆5ピッチ目はハイマツ帯をCフェース頭まで登りきる。
 下降はAフェース頭の少し下まで、八峰縦走路を下降。潅木にロープをグルグル巻きにしてあるところが懸垂の支点。 (この支点より8m上に同じような支点があるが、間違わないようにすること。これを使うと下りられません。)下降後、 ロープを回収する際は必ず壁からできる限り離れてロープを引くこと。壁際でロープを引くと結び目が引っ掛り回収できな くなる。下降のことさえきっちりと頭に入れておけば、その他は全く問題のないルートである。(記:加藤 優)
  
  08/14(火)晴れ
  ●チンネ左稜線ルート(津田 暢・安部浩章・井上哲也・石綿健一)
 2時30分に起床するが、周りのテント2〜3張りに明かりが灯っている。食欲なく、卵スープとカロリーメイトで朝食を済ませる。 満天の星が、本日も快晴を予感させる。4時10分、熊の岩BPを出発。池ノ谷乗越までの雪渓上、踏み跡あり、歩きやすい。乗越手前 20Mほど下に小さなシュルントが開いているが1M程のもので、難なく通過する。45分程で乗越に到着。池ノ谷ガリーに雪渓見当たらず。
 アイゼンを脱ぎ、小休止する。ガリーにも踏み跡明確にあり、助かるが、石は浮いている。「2年前は、踏み跡無かったよー」と津田 より。落石に注意しつつ慎重に下る。下るにしたがい、三ノ窓に6張りテント見られる。
 5時50分三ノ窓到着。雪渓有る為、再びアイゼンを着用し、雪渓を横切るが、10分も要せず。6時10分にチンネ左稜線の基部に達するが、 岩棚に順番待ちのパーティーが控えている。聞くと、「3時30分に熊の岩を出発したが、4パーティー目である」とのこと。 前に還暦?パーティーがおり、我々蝸牛の2パーティーは6・7番目。基部で待っている間、静かであるが、虫が時折うるさい。 三ノ窓雪渓を下っていく男女2人を発見、あーだこーだ言いながら時間を潰す。
 7時50分登攀開始。津田=阿部パーティー、井上(偶数)=石綿(奇数)パーティーの順に登る。
◆1P目(雪渓があり、左から回り込めたことから、トポ上の2P目)。出だし7Mのフェース。左にクラックが走っている。 フェースを乗越すと左上する凹角バンドを行き、テラスでピッチを切る。(約20m)
◆2P目。フェース〜バンド〜フェース。(約40m)
◆3P目。左のピナクルを右に回り込み、岩溝を登り、テラス。(約30m)
◆4P目。傾斜のあるフェースを直上。ホールドは大きく快適。右のリッジ上を登った方が易しい。(約20m)
◆5P目。易しいリッジ。(約40m)
◆6P目。リッジ左のハイマツ混じりのフェース。(約40m)
◆7P目。リッジ上の凹角。5P目から見るより、傾斜が緩く感じる。中間部、浮石多数あり、確認しながら登る。(約40m)
◆8P目。ピナクルの林立するリッジ。ピナクルの右側を行く。高度感ある。この頃より、小窓辺りからガスがわき始める。(約50m)
◆9P目。核心。右のリッジ添いからハング(お助け紐ある)下を左に1mトラバース。ハング下は、ホールドは有るが、 足が無い。スメアリングと左手カチホールドを頼りに気合いを入れ直し乗越す。ハング上はフェース〜リッジ。(約40m)
◆10P目。リッジ通しにクラックからフェースを登り、リッジ最上部へ。時折ガスに包まれ、肌に水滴を感じる。 左のルンゼを下降している2人より、「三ノ窓はこっちですか?」と問い合わせある。(約20m)
◆11P目。リッジ添い。(約25m)
◆12P目。リッジ添い。(約25m)
◆13P目。リッジ添い。ロープの流れが悪い。岩角・残置支点で最後のビレー。15時20分終了。(約40m) がっちり握手。雲行きが怪しい為、早々に下降準備をする。(晴れていたら、本当に叫びたい気持ちかも)
 下降開始。終了点より左稜線に向きを変え、右斜面にコルを目指し、50mクライムダウン。コルに懸垂支点あり。 途中3か所懸垂支点があるが、ルートを見ながら、2Pで池ノ谷ガリー上に降りる。池ノ谷乗越までは5分程の上り返しで到達。
 熊の岩、17時10分。ここまで降りると、ガスが無くなる。デポの荷物を回収し、真砂沢BCへ。18時30分、無事帰着。まだ明るい。 行動14時間20分。登攀7時間30分。順番待ちでゆっくり(ピッチ毎にフラットソールを脱ぎ、休めた)できたが、出来ることなら、 もう少し早くBCに帰りたかった。
 登攀について。支点は古いものも多数あり。残置ばかりに頼れない。岩角や立木(ハイマツ)、持参のハーケン、キャメッロト を積極的に利用。各ピッチの区切りはテラス状に広く、数人は立てる。ルートの7P目の岩は脆いが、ほぼ安定している。 フラットソールのフリクションも良く利き、信用出来る。一度も滑らなかった。未使用のギアはプーリーとペツルベーシック。 アブミ・フィフィ。ボルトキット・捨て縄。(記:石綿健一)

●八ツ峰Y峰Aフェース中央大ルート(古関正雄・中村裕子)
 私にとって初めての剣の壁、それがこのAフェースだ。蝸牛に入って1年。夏合宿で壁を登るという行為にワクワクした。 しかし、いざ剣に足を踏み入れるとどうだろう。登れるのだろうかという不安が大きくなっていく。
 この前日、Cフェースの古関・加藤組が渋滞にまきこまれたとのことで、この日はAフェースの魚津高と中央大ルートの 2本を登ることにした。朝5時過ぎ、隣の農大が出発してから出発。7時半過ぎには取り付きに着く。すでに農大の 1パーティーが中大ルートに取り付いていたため、先に魚津高に取り付くことにするが、どんどん成長して素晴らしい クライマーになってもらいたいという思い(?)から、後からやってきた農大2パーティーに魚津高を譲る。 登山靴にザックという“正統派”スタイルだ。スゴイ…が、真似はしたくない。中大ルートを登っていたパーティー の方が早く登りそうだったので、そちらから登ることにする。
◆1ピッチ目、中村リード。顕著にまっすぐに伸びているクラックではなく、少々左上する浅いクラック、そしてフェース を微妙に左にトラバース、そしてトポでは“浅いチムニー”と書かれている場所を登る(チムニーと呼べるようなものでは なかった)。途中からピンが少なく、少々ランナウト。落ちたらグランドフォールかなと思ったのでハーケンを打とうと思 ったが、うまく打てなかったためそのまま登る。半分くらい登ったところでビレイ。古いボルトと懸垂用の残置スリングあり。 “日本の岩場”のトポとは距離感が全然違う。このトポは当てにならないようだ。
◆2ピッチ目、古関さんリード。出だしの短いトラバースの一歩が核心。左足がうまく決まらず、細かいホールドとスタン スを拾ってこのルートの顔である“顕著なクラック”にようやく手が届く。寿命が縮みそうだ。ここだけ、越沢に似ている 気がする。そこから5メートルほどはレイバックで上がる。クラック沿いに上がり、クラックが消えたあたりからフェース に戻る。小川山で特訓をしてきた古関さんの巧みな登りを参考にしながら登ったが、手がなくなってA0を使う。スタンスが 乏しいため、体重移動とフリクションで登っていくしかない場所のようだ。30〜40mほど登った小さなテラスでビレイ。 このピッチが核心部。しかし、支点がいい間隔で打たれており、登りやすくされている。が、A0。
◆3ピッチ目、中村リード。出だしの数メートルが少々細かいホールドだが、ガバあり。3級程度だろう。階段状の岩を登 りハイマツを突っ切り、空に突き上げるように見えた岩峰のてっぺんに飛び出てしっかりしたハイマツでビレイ。ビレイ用 のスリングが何本もかかっている。バックアップを取りつつビレイ。B、C、Dフェースが正面に見える。今日はDフェース・ 富山大ルートが混んでいるようだ。
 この頂上から一段下り踏み跡沿いに20mほど進んでいくと、ハイマツの懸垂ポイントがある。40mくらいの懸垂。 八つ峰の縦走路と合流。ここから岩沿いに取り付きへ戻る。
 暑くて喉がカラカラでビールが飲みたい!と思いつつ、2本目の魚津高に向かうが農大の2パーティー目がつっかえており、 セカンドが1ピッチ目のビレイ点に着いたところであった。あえなく終了。この日は1本で終える。
 中大ルートは、古関さんもうなる素晴らしいルートだ。最初の2ピッチにクライミングの様々な要素がつまっている。 “基本的なフリークライミングに終始したルート”ということばがよく当てはまる。もう数ピッチ続いていれば、 間違いなく八つ峰を代表する名ルートになっているに違いない。
 初めての剣は、快適なクライミングが楽しめた。もちろん肝は冷やしたけれど、1年前より確かに成長している自分がいて、 さらに上を目指したい自分がいる。また登りたいルートが増えてしまった。もっと経験を積んで、腕を磨いて、楽しく登 れるルートを増やしたい。(記:中村裕子)
  
  08/15(水)晴れ
   前日、チンネ左稜線組の帰幕が遅かったため出発時間を1時間遅らせました。
 疲れた体にムチを打ちながらひたすら剱沢の雪渓を登りました。剱沢のキャンプ場で合宿の集合写真を撮りました。 別山の乘越では剱沢方面はどんよりしていましたが、室堂方面は明るく爽やかな景色でした。雷鳥平から室堂までの 階段のぼりが意外にきつかったです。
 12:00のトロリーバスに乗って扇沢まで降りました。人が多く臨時便が出ていて早めに扇沢に到着しました。
 帰りは、大町温泉「薬師の湯」に浸かりました。高速道路が諏訪湖の花火大会の影響で諏訪湖ICまで20kmの渋滞でした。 全員、無事帰宅できました。(記:井上哲也)
   

('07-09/02)