山行報告


【山域・山名等】

前穂高岳北尾根・四峰正面壁・北条=新村ルート/松高ルート

【日時】

2005年08月09日(火)夜行〜08月13日(土)

【メンバー】

CL古関正雄・鎌田 実・谷口浩平・橋本真和・津田 暢・岩橋 ・井上哲也

【ルート】
09日(火)横浜−沢渡
10日(水)沢渡〜奥又白
11日(木)奥又白〜四峰正面壁〜奥又白
12日(金)停滞
13日(土)奥又白〜沢渡−横浜
【詳細】 08/09(火)
   24:00 十日市場駅集合 鎌田さんの車にて古関さん、岩橋さんと合流。(井上さんの車は同刻二俣川駅にて谷口さん、津田君と合流)
 談合坂SAにて井上さんの車と合流し全員集結。

  
  08/10(水) 雨時々曇り
   06:45 沢渡駐車場発 雨が降り出したが、車中で様子を見ながら朝食を済ませ、踏ん切りをつけて出発。7人のメンバーでタクシーは2台となるが一人千円で上高地BTまで行ってくれる。
 07:25に上高地バスターミナルを出発し、明神、徳沢と経て11:20にパノラマ・中畠新道分岐に到着する。ここから急登になる。途中、三つあるうちの2つ目の広場(テラス?)で休憩する。ブルーベリーがうまい。 12:45に5・6のコルへの分岐(赤いテープ、左手の茂みに大きい平らなつるつるの岩。そちらが奥又への道)に到着。もう一頑張りで、奥又白池に着いたのは13:20だった。
 取り付きまで偵察の予定であったが雨天であったため、幕営後、水を汲み、ビールを冷やし、14時半ごろから宴会となる。夕方から晴れ、前穂〜屏風、常念まで360度の展望となる。明日のルートまでのアプローチ、四峰の壁に描かれた各ルートのラインを見ながら一杯やる。昨年と違い、トポを読み込み、地形図に概念図を書き込んできたのでトポと実際の景色とのマッチングが早い(昨年は理解不足であった)。 18:00 就寝

  
  08/11(木) 晴れのち曇り時々雨、後大雨
   橋本・井上、谷口・津田 北条=新村ルート/古関・鎌田・岩橋 松高ルート
 03:30 起床 05:15出発→05:40 奥又尾根乗越→06:30 C沢出合→07:30 T1〜北条=新村取付
 北条=新村ルート《橋本 記》
 奥又白池から奥又白尾根沿いの道を20分ほど登ると尾根上に岩(尾根上に岩は三つあるがその最下部、秋は一番上)があり、踏み後を辿りそこを右に乗っ越し、トラバースし雪渓に至る。雪渓でアイゼンを装着し、雪渓を右上、大きなチョックストーンが目印のC沢出合(池畔から1時間15分ほど)を目指す。 C沢出合で登攀具・クライミングシューズを身につけ、昨日の行動食の残りのピザパンを食べ、水分補給。昨夜も落石の轟音が夜の帳を壊すかのように響いていた、落石注意!! C沢出合の滝を越え、チョックストーン下からガレ・草付を右上、広いT1へと至る。T1からわずかに左に回りこんだところにビレイポイントがあり、ここが取り付きである。
  1P目 井上さんリード (25m)
 私たちは上記の取付よりも一段上にあがり取り付きとなり、ピン一本とカムでビレイ(甲南バンドをやや右上し、フェースを5m程上ったレッジで取り付いた)。 井上さんリードで登攀開始!草付からガリーを目指し登り、ガリー上部にビレイポイント(左右に有り)があるとのことで(正式な取り付きから5mあがった私たちの取り付きから20m=正式な取り付きからは25m程度)、セカンドで登攀開始。岩が脆く、押さえつけながら上る。これが本番の岩かと思う。
  2P目 橋本リード (25m)
 引き続き25m程やさしいフェース?草付帯を右上。ところどころ節理状の岩が脆い。
  3P目 井上さんリード (25m)
 ビレイポイントで相談しながらオブザベーションし、ルートを描く。草付のスラブ〜右上している草付のガリーへと右上するのがもっとも簡単そうなラインで、ここをルートと思いたいがピンが見当たらない。よく見ると真右にトラバースしていくところにピンが何本か見え、井上さんリードで登る。真右にトラバースは実際ピンが多く安心であるが、チムニー?というかガリーを右に回りこみ登ると広いハイマツテラスとなる。ガリーの入り口のピンが不安定で、右上の遠いところに打ってありランニング回収に少々苦労した。小柄な私にはホールドが遠い上に、岩が不安定で悪く緊張する。これで核心はリードできるのかと思う。
  4P目 橋本リード (25m)
 ハイマツテラスに着くと、大休止。行動食を食べ、陽光が降り注ぎ、肌を焼く感触、朝の爽やかな薫り、眼下に広がる雪渓とお花畑、先人達が切り拓いて下さった岩壁等・・・雄大な景色と高度感を楽しみながらのたばこを吸う、これが最高!2本も吸ってしまった。後続パーティーの津田君も登ってきたので登攀開始。初めての人工ルートのリードはぶっつけ本番である。自信満々というわけではないので井上さんにちゃんとセルフを流動分散で取り直してもらう。
 取り付き出だしからハングから落ちてきたであろうボロボロのハーケンの遺骸や朽ちたお助け紐が何本か落ちている。トポによっては「安定したピトン連打」となっているがランニングを取るピトンはよく見極めたい。第一ハング、今にも切れそうな、ぶら下がっている遠きシュリンゲにとりあえずのランニングとアブミをかけて、乗り込み、登ろうとするがなかなか登れない。いろいろ試みるが思い切りがつかない。井上さんからゆっくりどうぞの声。のどが渇き、飴を舐めながらフィフィでレスティング。A1じゃあ無理と思い、思い切ってアブミのリストループでA0、左足を側壁につっぱり、右足をキョン気味に上のホールドを取り、気合で第1・第2ハング突破。第3ハングでもまた悩む、止まる、パンプする。ハングからぶら下がる2本の繊維むき出しのシュリンゲにアブミをかけるがどうも登れない。夏の蝉とはまさに僕だなと思う。下を見ると谷口さんも到着しているし、その後ろのパーティーもテラスに到着している。フィフィとヌンチャクを使って休み、休み考える。谷口さんから横に行ってみればと言われ、右に下がっているシュリンゲにアブミを掛け、左のアブミを目の前(ハング真下のフェース、よこに走るガバの奥に安定したピン有り)に掛け替え、さらに右のシュリンゲに二つのアブミをかけ、最上段に立ちずり上がる。左のハングした上の部分で休み、ランニングを取ってからクライムダウンでアブミを回収。
 右に難なくトラバースするとピナクルがあり「ビレイ解除!!」、蝉は1時間かかって核心を越えた。井上さん、ごめんなさい。ポイントはハングを登る、越えるというよりもハングの切れ目を縫うようにして、A1というよりもA0をうまく使って登ることだと思う。
 井上さん30分弱で登ってくる。毎度のことながらお見事!!登ってきた井上さんも息き絶え絶え、セルフビレイ、飴、タバコ、火を指し出し歓迎。二人でここでも一服。やはり核心は核心である。
  5P目 井上さんリード(25m)
 バンドをさらに右へトラバースし、ここでも繊維むき出しのシュリンゲをA0してカンテを回りこんでから、急なフェース状のカンテを左へと登る。カンテに走るガリー・クラックを登り、途中でフェースへ出ると楽である。トラバースした後は支点も少なく、不安定である(最後のランニングは回収時支点が抜け、打ち直した)がカムやナッツがあれば便利であろう。 フォローであったがなかなか悪い・・・そして腕が疲労しているのでゆっくり登ろう。
  6P目 橋本リード(25m)
 雨がぱらつき出す。テラスから階段状のフェースを一段上がり、傾斜のゆるいスラブ状?をカンテ?沿いに右上。ホールドはやや遠いので手に足、スメアで簡単に登れる。やはり腕は疲れている。
 最後に草付・砂利のバンドから、スラブ状のバンドを真横にトラバースするがランニングはない。また、大きな岩が立っておりここではロープの流れに注意したい。トラバースを終えテラスに着くとピンが一本有り、ここでビレイ(一段上に二人がくつろげる安定したテラスがあるが、そこにはピンはない。登攀具をはずす用)。気をつけたいのは短い距離であるが声が通りにくいことだと思う。井上さんが登ってきて、握手し終了。
 2時間半以上待っても谷口さんと、津田君が現れず、不安がよぎる。現れたのはその後ろにいたパーティー。このパーティーは核心の4P目で立ち往生している谷口さん達用にトップロープをセットしてくれて、トップロープ用のガチャも貸し出していたとのこと。一緒に30分ほど待っていたが、涸沢まで戻るということで13:40にその場を去る。まもなく津田君コールすると、津田君じゃなくて松高ルートを登りすぐ終了点上部にいた古関さんのコール。14:30分ごろようやく聞こえた津田君の「降ります」の声で5峰基部まで移動した古関さんと連絡を取り、14:50分頃終了点を後にすることにする。
 終了点からは、25m程度北尾根を目指し右上気味登ることとなる。まずは、少し直上し、さらにハイマツと露岩を直上すると右にトラバースする踏み跡に出合う。ここを右にたどり、北尾根に出た後は涸沢側を歩くことを意識しながらクライムダウン。程なく4峰から4=5のコルへの懸垂点があるがコルに向かって涸沢側に行けばクライムダウンできる。
 5峰で松高ルートを登った古関さん、鎌田さん、岩橋さんと合流し、5=6のコルを目指す。 ここからもやはり尾根上の涸沢側を歩くことを意識して行こう。5=6のコルの幕場から踏み跡をたどり、ガレ、草付から北尾根からの支尾根を越え、踏み後を辿る。5峰基部から休憩2回程度を含めて・慎重過ぎる位に慎重に行って2時間半程度で奥又白池である。
 雨が激しく降り出したので、池に上り返す手前の尾根で休み合羽を着る。古関さんが壁で動く点を発見、コールすると谷口さんからハイマツテラスにいる旨が返ってくる。
 14:50 終了点発 → 15:20 5峰基部 → 18:00 奥又白池  20:40 就寝

  
  08/12(金) 一日中大雨
   04:00 起床  大雨と雷、そして何よりも谷口さんと津田君が心配で眠れなかった、どこにいるんだろう、寒いんだろうな、どうやって助けに行こうか、警備隊を呼ぶのか・・・。雪渓は悪くなり、C沢出合へ移る点も雪が不安定となり、また大きく開いていよう。C沢は落石混じりの激流となり、T1への草付は水が流れ落ちていよう。稲光がするたびに数を数え、近いのか遠いのかと考える。うとうとしながら朝を迎えた。起床・朝食後待機となる。6時ごろ懐かしい声で「ヨカッター、ご迷惑をおかけしました」。テントから顔を出すと池の周りを谷口さんと津田君がこちらに向かって歩いている。 裸足で駆け出て二人を迎える、交わす握手と抱擁。二人はびしょびしょだ。津田君とは感動の再会、谷口さんには何か暖かいものを用意しましょうかと聞くと、「冷たいビールが飲みたい、昨日は飲んでないし」との返答。一応二人には焼酎のホットレモン割りを作る。ここからは乾杯となるみんなへべれけになるまで飲んでいた。
 午後から井上さん・私も宴席に加わり酒を飲みつくす。明日は谷口さん・井上さんは下山予定。他のみんなで北壁Aフェースを登ろう! 18:30 就寝

  
  08/13(土) 雨
   04:00 起床 夜は晴れていいたようだが未明ごろからまた雨が降り出す。起床してもやはり雨。朝食をとった後、隣のテントから撤収の指示。後ろ髪を引かれながら下山となる。
 06:15 出発 → 09:20 徳沢園 → 11:10 上高地バスターミナル
 上高地バスターミナルから沢渡まではマイクロバスのワゴンタクシーで快適に運んでもらい、温泉に入り帰途に着く。マイクロバスは前日までに言えば早朝でも配車してくれるらしい。また毎度おなじみの湖畔の湯もビールを買うとお新香を出してくれるらしい。

  
   

('05-08/30)