【山域・山名等】 | 後立山連峰鹿島槍ヶ岳・天狗尾根〜赤岩尾根下降 | ||||||
【日時】 | 2004年03月19日(金)夜行〜03月21日(日) | ||||||
【メンバー】 | CL山下眞一・鎌田 実・橋本真和 | ||||||
【ルート】 |
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【詳細】 | 03/19(金) | ||||||
仕事で東京へ行っていたら、帰りの小田急線が事故で不通。家に着いたのは集合時間30分前の8:30だった。
とうてい時間に間に合わないので鎌田に電話をすると車で来ると言う。これ幸いとあざみ野で橋本を拾って家まで来てもらう。
それでも車に乗り込み出発したのは1時間遅れの22:00だった。中央道をひた走り、道の駅「安曇野松川」にて車中泊。
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03/20(土)晴れ | |||||||
仕事の疲れが溜まっていたのか5時出発のつもりが寝坊して6時出発になってしまった。途中のコンビニで朝食を食べ、大谷原を目指す。
サンアルピナスキー場の入り口から先は車止めが置いてあったが、除雪してありそうなので車止めを移動して入る。大谷原までしっかり除雪してあった。
大谷原は積雪1m位で登山届け入れの黄色のポストも口辺りまで雪に埋まっていた。 昨年の偵察に基づき、東尾根へ向かう林道を200mほど行ったところから右に分岐する林道で切り通しを越え大川沢右岸の林道に出る。 林道は一部左斜面からの雪崩で埋まっているが先行パーティーのトレースに助けられ1時間弱で取水口に到着。今年は雪が少なく取水口の上では本流がとうとうと流れている。 水量が少ないのが幸いで、浅い所を拾って飛び石伝いに靴を履いたまま徒渉する。一休みの後、荒沢から尾根に向けての急登が始まる。先行の2人パーティーが上部に見える。 昨年より時期が早い分雪が多く登りやすい。トレースにも助けられどんどんと高度を稼ぐ。第一クーロワールも第二クーロワールも雪の状態が良いので単なる急な雪壁である。 ハーハー言いながら登って行くとあっと言う間に天狗の鼻に着いてしまった。 天狗の鼻はなかなか快適そうな所で、すでにテントが3張りあった。先行パーティーがカクネ里側に少し降りた所を掘って雪洞を作っている。 南斜面にも雪洞が掘られているので、我々は少し先に行き、一段下りたカクネ里側に雪洞を掘ることにした。冬型の気圧配置になって大荒れの天気だとこんな方角に 雪洞は掘れないが、今夜は穏やかな夜になりそうなので安心である。着いた時間が早かったので、2時間半かけて立派な雪洞を作る。雪が締まっていて快適そうである。 各自思い思いの夕食をとり、酒を飲んだ鎌田のうんちくを聞きながら鹿島槍の夜は更けて行く。(ここまで山下記)
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03/21(日)快晴 | |||||||
4:20起床。初めて迎える暖かい雪洞でのシーンと静まり返った朝、途中シュラフをしめすぎて窒息しそうになり、過呼吸気味にうなされて
いたところを先生に起こされたことも忘れ、爽快な目覚め。眼下に広がるカクネ里、朝日を浴びる五竜岳に向かって討つ大キジは格別だ。
きっとどんな豪邸やどんな高級ホテルでするよりも快晴の朝に雪の稜線でする大キジには勝るまい、などと思いながら身支度を整え6:30、
相変わらずコンディションの良い雪をきしませながら出発。 早朝に北壁へ向かったパーティーのトレースを辿ることとなり、快適な行程。鎌田さんが先頭で真中は私、先生がしんがり。鎌田さんは 全く歩調を止めず、変えず常に一定のスピードで登っていく。初めて経験する急峻な雪壁、細い雪稜を越え私たちはガンガン高度を稼ぐ。 雄大な景色とは裏腹に一歩間違えば谷底に消える緊張感がより高くへと導き、しかしより一層慎重にさせる。後ろを振り返り眼下を見下 ろすと全容をあらわしたカクネ里が広がる。最低のコルに向かって慎重に下降、北壁が右眼前に迫ってくる。氷壁も抱える北壁には、 数パーティーのクライマー達が蒼い空を目指して攀じ登っている。モチベーションが高まる。 スノーリッジを越えてコルから登っていくと我々もいよいよここからミックスの岩壁、トポには夏で3級程度とあるが、どんなルートな んだろうと考えたり、振返って登ってくる先生の写真をとったりと少々余裕が出てくる。しかし油断大敵。一歩間違えば多分瞬時にカクネ里 に到着してしまう。と思っていると2人組パーティーが飛ばして追い抜いていく。一本とり先行パーティを待つ。SPF50の日焼け止めもなん のその陽光がバクラバからでている頬や鼻を焦がす。気温は―3℃程度、無風である。 岩壁直下に近づくと未だ先行パーティーの一人目がリードしている。わりと手こずるのだろうか?使い方を本で読んだ新品のデッドマン でセルフをとろうとしていると、というよりいじっていると先生に埋め方を教示いただく。下では東尾根方面から来た2人組のパーティー も先行パーティーの順番待ちしている。 ようやく先行パーティーが2P目へと向い、鎌田さんリードで9:00過ぎスタート。直上ではなく右に下部をトラバース気味に取り付く。 残置ハーケンでランニングを取り、チムニーともクラックとも言い難い岩と岩の間を抜けたところの木で2本目のランニング、そして上 へ抜ける。セカンドは私、少し離れて先生。ザイルをつけた緊張感で少しひよったのか、右にトラバースするところ、トラバースして 取り付くところでちょっと苦労。基本的なことだが、ザイルが木の枝や岩角に引っかからないように気配りをするのと、エイヤッといく のを忘れていた。2本目のランニング手前、岩と岩の間の部分、ホールドとスタンスが無い、、、、、と思ったら雪の中に隠れている。 後ろというか下方からぐんぐん登ってくる先生ザックの赤布が早くしろとせっついている。 2P目、ここも鎌田さんリード、岩壁中の最後の雪壁を逃げマントリングして木の根をスタンスにしてエイヤッで上へ抜け出す。 ここが核心であると思われるが自分の未熟さを差し引いても本当に3級ではないのではなかろうか。 頭上に広がる北峰まであと少し。次のピッチは急で長い雪壁、ビレイしながら登る。あとは稜線をつめるのみ。 なんだか高いピークだと思ったらここが北峰、時計の針は12:10を指している。 快晴の360°の大展望。剣、槍・穂高、岩と雪の殿堂の山々が集っている。いつもみんなの写真をとってくれる先生だが、 この時ばかりは先生が主役、はしゃいで剣をバックに写真撮影。剣に耽る先生の背中に目標と対峙する岳人を感じる。 リードをした鎌田さんからは頂きを踏んだ冷静な岳人を感じる。少々風が吹き始めたので、北峰と南峰の間の鞍部で雪庇を避けて一本。 私もついついはしゃいで寝そべりながら剣、槍・穂高のそれぞれをバックにスナップ。鎌田さんが稜線上にせり出した雪庇を眺めながら、 谷底へ一直線的な話をしている。 先生は迷った上で稜線縦走して赤岩尾根を下降するとの判断。計画では赤岩尾根下降となっていたものの昨日、今日の雪の状態が よかったので最短ルートの北俣本谷下降を期待していた私、頭の中でヘッドランプが点灯し、ちょっと気持ちが萎える。 急に目の前の南峰が遠く感じられてきた。 腹ごしらえを終え、13:30彼方に赤岩尾根を見下ろし出発。南方を踏んで遠くに北鎌尾根を視認しながら下っていくにつれ、 萎えた気持ちも、あきらめ、そして鹿島槍の概念に抱かれた軽快な縦走へと変わっていく。雪庇が走る稜線をお鉢めぐりのように飛ばし、 爺ヶ岳等裏銀座の山々が近づいてくる。雪庇の稜線、鹿島槍概念の勉強、勉強。冷池山荘で一本入れ、下降に備えて、膝をいためている 鎌田さんはアックスからストックに持ち替えて14:50出発。樹林帯から雪庇を避けてトレースをトラバースし、稜線を登り返す。 分岐にあと1.2KMとおもったらやはり12KMの文字。雪庇の間を突いて赤岩尾根へトラバース。この陽気でぐしゃぐしゃかと思われた 赤岩尾根のトレースも、日が傾き始めて山影で丁度良いコンディション、ぐんぐん高度を下げていくが西俣出合はまだまだ遠い。 高千穂平をすぎてようやく遥か遠くに先生の愛車が赤いゴマ粒のように見える。一旦解けていたトレースも気温が下がって固まり、 膝に響く。 ようやく西俣出合、家路に向かう足跡を追う。後ろからは夜の帳が追ってくる。あと200Mというところで先生、鎌田さんを待ち、 給水ついでにヘッドランプ。暗闇から人影、ヨカタァのコールに呼応。先生だ。18:40ようやく登山口。荷物をしまっていると 鎌田さんのヘッドランプが見えてきた。なんだか急に寒い。 薬師の湯で温まり、顔の火照りを冷水で冷やした後、20:15家路につく。途中梓川SAで3人そろってソースカツ丼を食べる。 運転する先生に申し訳ないと思いながらも車中爆睡。0:40先生の家の駐車場着。終電も終わってしまっているので鎌田さんが 自宅に送ってくださる。
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総 括 | |||||||
今年度最後の山行なので少しスペースを頂きたい。 今回の山行にはステップの刻み方、アックスの使い等、岩の技術等々全てが凝縮されていたように思う。 入会して間もない昨年11月の富士山に始まり、数本のアイスのゲレンデ〜白毛門のラッセル、八ヶ岳のミックス、個人山行のボッカ等。 そして冬季は本山行が今季そして今年度最後となろうがすべてが今回のためにあったことを心から実感する。 11月から今まで山行、トレーニングがあって今回のルートと対峙している自分がいることに気付く。 思い出してみれば昨年5月妻と行った残雪の奥穂の上部の雪壁を一昨年目撃した滑落を脳裏に浮かべ、おびえながら1人登った、 その時、単独での縦走の限界を感じていた自分がいた。 結果的に今回の山行が今冬季最後の実践の場であるわけだが、ふと気付いたのは冬季バリュエーションの素晴らしさである。 景色の素晴らしさとはまた別で、プロセスと、人と目標の3点である。会の先輩方やパートナーと共に目指す山行や自分のやりたい山行 を目標として持ち、日々の山行やトレーニングを行い、ステップアップをしていく―冬季バリューションを目指す―先輩方が何気なく おっしゃっていたこと、会報やHPに記されていることだが、初めて実感した。 先輩方にはえらそうに言うなと怒られそうだが、様々なラインを引いた先人たちの思いと苦労に対して改めて尊敬を湧き上がってきた。 今年度最後の雪の状態、天気すべてがベストコンディションの山行を通して、カタツムリに深く感謝して、感動を覚えた。 この6ヶ月は多くの先輩方と出会い、山に共に行き、立ち飲み屋でへべれけになった。個人山行の夏の北ア縦走を終えた後、 8月に先生と出会い、例会に顔を出し、井上さんと釜ノ沢で飲み・歌い、例会の後は小関さんや鎌田さん、谷口さん、太田さんの 熱い想いをきいて自分も燃え、櫛舎さんの熱い執着心に影響された半年だった。 来年度このみなぎる思いを来るべき次の冬季へとぶつけるべく、新年度を迎えたい。 生意気を言いましたが、まずは人一倍小さい子供のような手でザイルワークをもっと練習しなきゃ。(記録:橋本)
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