アイススクリューの比較と研磨


   
 

   2014-2015シーズンより発売になったペツルのアイススクリュー「レーザースピードライト」 はその軽さと喰い込みの良さでアイスクライマーを魅了しています。(しかし、高価ですっ!!) バーティカルアイ スのヤバイセクションでは、一発でスクリューが刺さりセットできる事はお金に変えられない利点です。(でも、高い っ!!) ブラックダイヤモンドのアイススクリューとの違いは何なのでしょう?比較して見ると次のような違いがあ ります。

 ●スクリューの重さ比較(13cmの物で比較しました) 【ペツル】
レーザースピードライト   91g 本体:アルミ   ハンガー:アルミ
レーザースピード     128g 本体:スチール ハンガー:アルミ
レーザー          120g 本体:スチール ハンガー:アルミ
【ブラックダイヤモンド】
エクスプレスアイス    134g 本体:スチール ハンガー:ステンレス
ターボアイス        131g 本体:スチール ハンガー:クロモリ
 圧倒的にレーザースピードライトが軽いです。これは持った瞬間に分かります。
   


 歯の形状はと言うと、レーザースピードライトは各歯の間の谷間に丸い穴があります。また、ブラッ クダイヤモンドよりも刃先が尖っていて触るとツンツンしています。
 ●刃先の角度を比較してみました。
レーザースピードライト  約45°
エクスプレスアイス    約60°
古いターボアイス     約70°
 この角度は先端が氷を削り取りスクリューの中心部に送り込み排出するのに関係しています。
 鋭いと削り取られた氷が細かくなります。ペツルのレーザースピードライトの方が、ハンドルを回した時に何かネバ つくような感触があるのはそのせいかも知れません。
 鋸には「縦引き」と「横引き」があり、「縦引き」は刃先がカンナの様に木を下に削り取る構造になっているようで す。ブラックダイヤモンドの古いターボアイスはこの角度が大きく、刃先は細く尖ると言うよりは平たく削る感じにな っていて、スクリューを入れているときに出てくる削られた氷はサラサラしているようです。(氷の堅さにもよります が…)
 そのせいで、ハンドルを回しているときにもスルスル入る感じがします。

 ●刃先の長さを比較してみました。
レーザースピードライト  約9mm
エクスプレスアイス    約9mm
古いターボアイス     約7mm
 この長さは先端が氷に刺さる部分です。長いほど氷への喰い付きが良くなりますが、あまり長いと回
転させるときの抵抗が大きくなります。ブラックダイヤモンドの古いターボアイスがスルスル入ったのはここが短かったせいも あるかも知れません。
   


 そこで、ブラックダイヤモンドの古いターボアイスを加工することにしました。加工のポイントは次の3点です。

1.各歯の間の谷間に丸い穴をあける。
2.歯の谷間を深くして、長さを9mmする。
3.歯の角度を45°にする。

 「各歯の間の谷間に丸い穴」の意味は削った氷のかすをスクリューの中心部に送り込みやすくするのだと思いますが、最初の 喰い付きにおいてはここに溜まった氷のかすがスクリューを支えている部分もあるようです。この穴が無ければエクスプレスア イスと同じ構造になります。実際の使用テストでは穴があった方が、ほんの少しですが喰い付きが良いようです。





   使う道具は、まず、これです。



 刃物を研ぐには刃物研ぎの道具が一番。チェーンソーの目立て用ヤスリです。φ4mmの物が良いようです。スクリューを万力 に固定して、十文字に谷間を削り込みます。その際に、真下に削り込むだけでなく、気持ち時計回りに力を入れると良い位置に 穴が出来ます。
 このままだと穴の縁が直角なので抵抗になってスクリューの回転がスムーズに行きません。そこで次に使いのがこれです。

 
 これもチェーンソー目立て用です。もともとルーターに付けて使用する物ですが、電気ドリルに付けて低速回転で トルクをかけてやるときれいに削ることが出来ます。

    

 ヤスリで作った丸穴に差し込み、先端を図の方向に移動させながら削り込んでゆきます。

 最後にステンレス用(難削材用)の平ヤスリで歯の形を整えてあげます。


   実際に使ってみると喰い付きは非常に良いです。ペツルの様に1/4回転で手が離せるかというと、傾斜の緩い所で は良いのですがバーティカルになるとダメです。これはスクリューそのものの重さが関係しています。ペツルのレーザースピ ードライトはハンガーや本体がアルミで出来ているためにスクリューの手元部分が非常に軽いのです。そのため、先端が少し 喰い込めば手を離してもスクリューは氷に立っています。でも、改造ブラックダイヤモンドも1/4回転した後に、再度1/4回転させ る(合計1/2回転ではなく、少し戻して同じ位置で1/4回転させる)と手が離せます。
 刃先を岩に当ててつぶしてしまった時などは、ついでですからペツルタイプにしてあげると良いかも知れません。

【作業はスクリューを手で持ってやったのでは刃先の角度が甘くなってしまいます。万力を作業台に固定し、木の板を2枚挟み、 その間にスクリューを挟み込むと安定して作業が出来ます。】

                                                     ('15-02/15 作成)

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