96年 夏・シヤモニー報告         
 
1.参加者
  CL坂口次男 坂口紀子
 
2.行動日程
 平成8年(1996年) 7月15日〜29日
 
3.行動記録
 
○ 7/15 成田21:55発(AF273)
○ 7/16 パリ4:25着/7:15〜ジュネ−ブ8:20(AF2816)
   17:20−20:00シャモニ−着〜ロジェールキャンプ場チェックイン
 
 バスは1日2本のみで、朝(8:20発)の便は行ってしまったので、公園で昼寝して延々と時間をつぶす。
(タクシーで行ってしまっても良かったかも?)バスは何故か大幅に遅れてシャモニ−着
 
○ 7/17 装備買い出し、スキー・ヘリ保険(カルト・ネージュ)加入        晴れ
○ 7/18 ミディ南壁・レビュファル−ト(ノ−マル下部2Pのみ)          晴れ
   ロジェール7:30〜ロープウェイ8:00〜9:00取り付き10:00〜2P11:40・下降〜12:10戻る
 
  本当は一歩一歩モン・ブランに登って高所順応をした方が良いのは百も承知だが、時間が無いので、数日居れば慣れるだろうといきなりミディに上がる。だが、やはり乱暴だった。一応取り付いてみたが、1動作する毎に息が苦しく、とても登れないので2Pで下降。それにしてもピンがほとんど無い。古い木のくさびの残骸が所々に残るのみ。それに、この有名ル−トにあまり人が取り付いていない〜と思ったら現在はもっと右上から取り付き、ずっとトラバ−スするようにして2P終了点に合流するのが一般的なようだ。 (ここからは残置も結構ある)懸垂下降で戻る。
  「ミディにBC張って1週間くらい居ると良いよ」なんて聞いていたのでそうするつもりでいたのに、昨日ミディ(はじめ山上)は幕営禁止、と聞いてしまったのでコスミック小屋に行く。 が、「予約してない人はダメ。」と言われたので「ビバ−ク」(はOKらしい)する事にする。「コス ミック山稜くらい行こうよ〜」と言いながら、疲れがどっと出て2人とも熟睡してしまった。
 
○ 7/19 ミディ南壁・レビュファルート                晴れ
    取り付き8:00〜終了14:00〜14:30(撤収)16:40〜ミディ戻り17:30
 
  一晩寝たら少し慣れたような気がする。今日は皆が取り付いてる方から取り付く。準備する間にも続々人が来る。2パーティくらい後に来たガイドみたいな人がやたらうるさくて、文句をずっと言い続ける。「日本人荷物が多い。遅い」「そんなにフレンズ持ってヨセミテでも行くつもりか」 「登りたいんなら先に行かせろ」あまりうるさいので、後に来ていた他の日本人パ−ティは、他のル−トに行ってしまった。核心部付近ではどうしてもたまってしまうようで、前のテラスもつまっているので待っているのに、強引に抜いていこうとする。結局、テラスで抜かさせた。こちらでは、ガイドを雇って登るのだけが正しいのだろうか?ガイドがプロテクションもろくに取らずにさっさ と登り、後ろから、明らかに初心者が、ふうふう言いながらめちゃくちゃに登って行く。そんな光景が多い。
  ミディの駅からコルヘの下りもそうである。両側が切れ落ちていて確かに恐いが、超へっぴり腰がロープにつながれて道をふさいでいる。
  上部で段に上がった感じのところから、ル−トを右よりに間違ってしまったようで、ピ−クの左に出るはずが右に出てしまう。他のパーティも思い思いのラインを経て、同じ場所に集まってきた。
  ピークから40m懸垂。雪からのぞいたコンクリ上でプラブーツにはきかえ、わずかでミディの建物に着いた。
 
○ 7/20 休養(土曜の朝市)                    晴れ
 
  朝市は土曜日しかやってないからと、結局朝市見物で終わり。去年は新鮮な面白さがあったが今年は慣れてしまった。
 
○ 7/21 ミディ〜プラン〜ルカン〜モンタンヴェ−ル縦走       晴れ
    ミディ8:00〜ロニヨン10:00〜(懸垂下降)プランのコル11:10〜プラン11:46〜プラン基部 12:20/12:30〜ルカン小屋(改築中)14:30〜モンタンヴェール17:00
 
  ミディを発ってしばらくは雪稜。徐々に角度を変える景色が最高の展望コ−ス。
  だが、しばらく行くとバレ・プランシュ側に下り、コルへの下降が氷の急斜面で悪い。(稜通し の方が良い?)少し登って岩稜混じりとなり、リッジから山腹を左から巻くように登る。先行パ−ティがたまっていてスタカットしていたが、全然問題なかった。数パ−ティ抜きながら進む。ロニ ヨンではまた人がいっぱいたまっている。クライムダウンできるだろうと思っていたが、皆懸垂下 降しているよう。しかも、慣れていないらしく、異様に手間取っている。
  結局、懸垂を3回して下部に。上部でもっと先に進むようにトラバースすれば、クライムダウンできたかもしれない。(FIXもあった)また、少しずつ進みながら斜めに下降して行ったが、面倒なら長い懸垂をすれば直接下に下りられるかも(?)私達は20mくらいの短いロープしか持っていなかったので、小刻みに下ってかろうじて足りた。
  再び雪面に下り、コルからプランへ。槍の穂先みたいな感じ。真下まで雪稜を登り、最後に岩を数10m登ると狭い頂上。途中でアイゼンを外した。下りは、2回程度短い懸垂下降をした。
  コルへ戻り、ルカンへの氷河の下りは「いつも非常に荒れている」とガイドブックにあったので、
 結構恐れていたのだが、未だ時期が早かったためかクレバスもそんなに開いて無く、トレース通りに素直に下りられた。去年のポノン氷河の方がよほど悪かった。(但し、ヒドンや小さいのはたくさんある。コンテは当然。)
  ルカンのすぐ上まできて、氷河が切れて岩場になってしまう。FlXあり。数mの短い懸垂をして後クライムダウン。これは意表を突いていた。
  ルカンの小屋は建て直しているらしく、工事中の雰囲気。小屋番のお姉さんはおり、きれてしまったフィルムを買った。
  ここからしばらく道をたどると、氷河まで見事なルートが削ってある。岩を段に削って足場にしたり、鉄のプレ−トが一定の間隔で取り付けられていたり、はしごもあり、良くここまでと関心する。
  はじめてメ−ル・ド・グラスに下りる。中心部などは平らで安定しているが、場所によってはずたずたで、進めなくなって戻ったりした。途中、マークもあり、一旦左岸のガレ場に上がった。このあたりは右岸のモレーン沿いならそのまま進めるはずだから、はじめに思いきり右岸までトラパースしてしまっても良かったかもしれない。
  点々とある緑のマークの石をたどって進む。モンタンヴェ−ルが近くなると、左岸に寄るようになり、最後は岩にかかったはしごを登ってモンタンヴェ−ルへと着く。
 
○ 7/22 休養(ラック・プラン=白い湖ハイキング)          晴れ
 
  非常に眺めの良いコース。ハイキングなら、シャモニ−針峰を向かいに見られるこちら側が確かに良い。この上部にも結構岩場があり、登っているのが見えた。
 
○ 7/23 モンタンヴェ−ル〜ク−ベルクル小屋(モアヌ南壁下見)    晴れ〜雷雨
    モンタンヴェール8:00〜岩場取り付き11:30(氷河、上方散歩)/12:20〜クーペルクル
    小屋13:30
 
  「クーベルク小屋からモアヌ往復〜氷河を下ってシャルプア小屋からドリュ往復」の2泊3日の予定をたてて出発。予報は今日後半から2〜3日の悪天になっていたが、モン・ブランの付近に笠雲がかかり、いかにも悪くなりそう。だが小屋くらいは行っておきたかったのでとりあえず発った。 今度は小屋を両方とも予約していったので安心。
  だんだん雲が流れて来て、あまり持ちそうになかったので、レショの方まで行くのはやめにして、急いで小屋に向かう。岩場の取り付きは急で、はしごを2〜3登り、岩場を削った足場と鉄棒の手すりで登っていく。これハイキング道というのだから、感心してしまう。日本の言う「登山」とは、こっちで言う「ハイキング」なのだと思う。
  一登りすると傾斜がおち、普通の道になる。小屋に着いてすぐ、雨になってしまった。しばらくして一旦やみ、空が明るくなったので一応モアヌ南壁の取り付きを見に行く。
  「西への小道をたどり」とあり、結構良い道があったのでたどったらどんどん壁から離れて展望場所みたいなところへ。壁へは小屋のすぐそばから登る道が続いていた。雪渓みたいなモアヌ氷河まで行くと南壁が正面に見えるが、再び空模様が怪しくなってきたので急いで下りる。
  小屋に帰ると、程なく激しい雷雨になってしまった。
  いつもは混んでいる小屋らしいが、さすがに今日の天気ではすいていた。
 
○ 7/24 クーベルクル小屋〜モンタンヴェール             曇り/雷雨
    クーベルクル小屋11:00〜氷河11:46〜モンタンヴェール13:50
 
  引き続き雨。朝食を4:30に頼んでしまったので、食べなきゃいけないのかなあと一応食堂に下りて行くが、「今食べたいのか?ならば用意する」と言われ、ベッドに戻った。(良かった)周りの人達も同様。
  明るくなってからのんびり起きて、ゆっくり朝食。どうせ下山するしか無いので、うだうだするうち、雨がやむ。空は暗く風は相変わらず強いが、いいかげんなところで出発する。氷河に出てしばらくすると、急に大粒の雨が降り出し、風も出てくる。上下雨具・ピッケル・アイゼンの完全装備。石ころや土で汚かったメール・ド・グラスの表面がきれいに流されて、ぴかぴかの氷になっていたのには目を見張った。
  普段はほとんと問題無いのだが、両側がクレバスの細い部分もある。風が強かったので結溝緊張した。途中、アイゼンを持っていなくて肩を組んで歩いている人、短パン姿でとても寒そうな人などがいて、可袈想だがどうしようも無い。連絡が走ったようで、モンタンヴェ−ルで救助隊らしき数10人の団体と行き違ったので、すぐ助けられたと思う。
  モンタンヴェール近くまで行くと急に風が弱まり、さっきまでの世界が嘘のようだ。下はそんなに降ってないのではないかと思っていたが、実は豪雨だった。
 
○ 7/25 (夜中増水〜避難)休養・装備整理              霧〜晴れ
 
  夜中の3時にいきなりテントを揺さぶられ、誰かが騒いでいる。夢うつつでぼ−っとしていたが、
 どうやら雨で川が増水し、避難しろといっているらしい。
  どこかで寝ることになるらしいので、シュラフなどの荷物をまとめ、シャモニ−バスに乗せられた。街のインフォメーションのすぐそば、もとホテルという役所の地下の、バレエの練習場で寝ることになった。取りあえず、キャンプ場でご近所さんの日本人と一緒に行動。他のキャンプ場や、川近くのアパ−トなども避難したらしい。
  朝になったら、特に説明も無く、皆ばらばらに帰って行く。こういうものなのだろうか?ロジェ−ルはとりあえず大丈夫ということなので、歩いて戻る。街はあちこちで浸水し、いつもの道も通行止め。橋も流木がのり、流されたものもあった。キャンプ場内も低いところが水浸しになり、裸足で渡る羽目になった。
  午前中で雲が切れ、晴れてくる。テントをひっくり返して全部乾かす。
 
○ 7/26 ミディ・コスミック山稜(キャンプ場チェックアウト〜ホテルに移動) 晴れ〜曇り
    ロジュ−ル5:30〜ミディロ−プウェイ6:00/7:00=山頂駅7:30/8:00
    〜コスミック山稜取り付き8:30/8:40〜ミディ展望台11:05
 
  3日振りのいい天気に、ミディの切符売り場は長蛇の列。こちらはどこでもカードや小切手を使う人が多いせいか、なかなか進まない。「8」の整理カードをもらい、1時間かかってやっと乗車。 山頂駅からコルへの下降も行列になっている。コスミック山稜も人の列が絶え間なく続き先が思いやられるが、下部は問題ない雪稜なので、普通に歩けばほとんど抜ける。(アイゼンは初めて?と いう感じのひとばかり)今度は、「そんなに急いでどうするんだ。私達はもっとまわりの山を見て楽しんでる。」のお言葉。これもガイドのよう。どちらかと言えば余裕を持って、景色も見ながら普通に歩いてる。後ろの人は下だけ見てぜいぜい歩いてるパーティに言われたくないなあ。よそ者は何をやっても気に入らないのだろうか・・・
  1回懸垂下降が入るのでかなりばらける。壁に着いたときには待ちなしだった。出だしの垂壁は、クラックの残置の太い鉄棒で強引に上がる。1段上がったテラスから、そのままク−ロワ−ルが続いており、そのまま行ってしまったら、後から来たガイドさんが「そこはとても難しいル−トだ。 ノ−マルはこっち。」と、実はテラスから下り気味に左に回り込む正規ルートを教えてくれた。優しいガイドさんもいるものだ。傾斜もあるしちょっと難しそうには見えたが、出だしが強引だったのでこんなものかと思ってしまった。正規ルートはほとんど問題なく、易しい岩場をずるずるコンテで登り、最後は展望台にはしごで登って終了。
  人さえ少なければ、良い稜だと思う。どうせ短いので、朝一番で行かない方が良いような気がする。下りてきたら天気予報が変わっていて、また明日から雨だとのこと。朝も、晴れてはいたが雲があまり良くなかった。
  テントなどを干し、倉庫にしまってキャンプ場をチェックアウト、ホテルに移動する。
 
○ 7/27 シャモニー16:30〜(バス)〜ジュネーブ18:20
 
○ 7/28 ジュネーブ10:50〜パリ11:55(AF2863)/13:30発(AF276)
 
○ 7/29 成田8:15着
 
 
感想
○ 今回、超有名ルートぱかり行ったせいもあるんだろうけど、人の多さに辟易した。強引な人が目立ったし、何 か変にせいて登らないといけないようで楽しみきれなかった。
  壁は確かに大きいので、早く登る必要がある。
 こちらとしても、ある程度恥ずかしくないように、登り方を含め行動には気を付けなければいけないとは思う。
 
○ 天気が崩れると半端じゃないので、悪天時も登るという考えは、あちらでは捨てた方が良いと思う。 あっち  の人は見事に何も持っていかなし、良く晴れたた日に軽い荷物で速攻で登り、悪くなったら即下りる。 山城の 特徴が自然に登り方を決めてきたのだと思う。
 「郷にいらずんば郷に従え」で私達もそうするつもりでいたが、やっぱり習怯が出てしまうことがまだまだ多いよ うだ。
  装備、食料ひとつひとつから考え正した方が良いように思った。
 
○ 去年も思ったが、ルートによってはプラブーツも必要無い。
 モン・ブランに登ったり、ミディ〜プランに縦走したり、という時には無いと困るが、例えばミディ南壁に登るので  あれば、軽登山靴やジョギングシューズにバンドのアイゼンをつけ、バイルを持てば充分である。登るときの身 軽さを優先させた方が良い。空荷で登って、懸垂下降する人も結構いた。
  岩は非常に大まかで、強引にがんがん登っていく感じ。シャモニー特有らしい。
  プロテクションは残置+ナチュラル・プロテクションが一般的なようで、ロックス、フレンズ類は皆持っていた。   これは日本で練習しておいて良かったと思う。大きめサイズが欲しい。
 
○ はじめから納得していたが、あまり登れなかった。
 せめてモアヌとドリュの一般ルートくらい行きたかったが、期間から言えば望み過ぎなのだろう。
 ミディのコスミック、南壁、及びミディ〜プラン縦走だけでも登れれば良いなとは思っていたので、前半天気に恵 まれて、これらを登れただけでも良かったと思う。私達が帰って後2週間程ずっと雨続きで、ロジェ−ルでは毎  日宴会場と化していたと後から聞き、とても恵まれていたのだと知った。
  また、悪天になり、メール・ド・グラスの豹変ぶりを体験できて、逆に良かったと思う。あの状態を見ていないと 、たかをくくってしまい次はアイゼンも持たないで行っていたかもしれない。
 
○ 社会人の夏休みはどうしても限られるため、ロングルートを登るのは確かにに厳しい。
 それほどの高所ではないので、日本でも富士山に通うなどできればまだ良いが、行ってから慣らしていたので は、慣れた頃帰らなければならない。天気が悪かったらどうしようもない。
  だが、今まで手探りできたが今回でほぼ感じは掴めた。今度行く時には、もっと狙いをしぼって行けると思う。
 
○ 私達の帰る日は晴れて良かったが、雨続きだったらどうするのだろうと思う。(去年、雨でしょうがなくテントを ぬれたまま置いていった人は、やはりカビだらけだったそうだ,倉庫にデポするものは完全に乾かしたい。)
  帰る日が近づいたら、SKI STATION など安いところもあるので、早めに宿に移動した方が良いかもしれない。  私達の場合どうせ短期間なので、はじめから宿か、アパ−トを借りるなどした方が良いかもしれない。
 
シヤモニー追加情報
○ 飛行機はパリ乗り継ぎジュネーブ往復、ホテル2泊付さで17万円。(GIOクラブ・エールフランス)
 南回りで20時間かけ、9万円(中華航空)で来た学生もいた。お盆の頃でも23万円位。
 ジュネーブからシャモニ−へはバスで約2時間(1日2便) 41SF/188FF(約4000円)
 
○ 山上での幕営禁止:1992年から、ミディのコルはじめ、山上での幕営は禁止されている。ビバ−クは良い・・・
 ミディ周辺は、いちいちロープウェイに乗って日帰りしろということらしい。
 
○天気予報:インフォメーションの予報はフランス語のみ。当日、翌日分のみ。
 ガイド協会には1週間分の予報が張り出される。

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