山行報告


【山域・山名等】

谷川岳一の倉沢烏帽子沢奥壁 中央カンテ
【日時】

2002年7月6日(土)夜行〜7日(日)

【メンバー】

白根 武・鈴木真理子(記)

【ルート】06日(土)横浜(19:15)→(23:00)出合駐車場
 07日(日)駐車場(05:00)→(06:30)中央カンテ取り付き→(06:50)登攀開始→(11:15)烏帽子岩基部→(12:00)懸垂岩(登攀終了) →(14:30)烏帽子スラブ→(17:00)駐車場→横浜


【詳細】07/06(土)
   19時過ぎに白根さんの家の辺りを出発。天気予報では日曜日は曇り一時雨。沢の用意もして行く。この日に先生と 古関さん、鎌田さん、長田君が2ルンゼに登ったはずなので天気と雪渓の様子を聞こうと先生の携帯に電話をかける。留守電に なっている。そろそろこちらに向かってるはずだけど、お風呂にでも入っているのか。後でまたかけることにする。都内の道路 が混んでいたので関越に乗るまでにちょっと時間がかかってしまい、水上ICを降りたのが22時過ぎ。その間何度か先生や長田 君、鎌田さん、古関さんの携帯に電話をかけるが通じない。ひょっとしてもう一泊かな〜などと話しながら谷川に向かう。10分 くらい走ったところで白根さんが先生のデリカらしき車とすれ違ったという。まさかと思いつつ先生の携帯にかけると・・・。 つながった。なんと、ついさっき下山してきたという。セブンイレブンで買出しをするというので私達も引き返してセブンイレ ブンで落ち合う。
 2ルンゼはとても悪くて同ルート下降で時間がかかってしまったらしい。これから湯檜曽駅で泊まって朝帰る とのこと。お疲れさま。天気は1日中曇りだったらしい。衝立の方の岩は乾いていたということなのでちょっと期待をする。 セブンイレブンを後にして一の倉沢へ向かう。
 23時頃出会いの駐車場に到着。思ったより駐車スペースが空いている。23:30就寝。

  
 07/07(日)
   4時起床。夜の間に結構雨が降ったようだ。まだぱらついているが空はだいぶ明るい。天気予報では一時雨。岩も 乾かないだろうと思われた。が、特に中止という声もあがらず、5時に駐車場を出発。2週間前にきたときにあった出会いからす ぐのところにあった雪の固まりは無い。雪渓はだいぶ上の方だ。しばらく樹林帯を歩いてから雪渓へ降りる。雨で洗い流されて しまっているせいか滑る。今ひとつペースが上がらないがとりあえずテールリッジに着く。さすがにちょっと口が開いているが 場所を選べばしばらくは大丈夫そう。岩が濡れている。下の方は泥混じりなので運動靴のまま上がる。途中でクライミングシュ ーズに履きかえる。岩は濡れているがそれでも運動靴よりはましである。一時間半くらいかかって中央稜の取り付きに到着。 ここでハーネスをつけて中央カンテ(というよりは凹状岩壁)の取り付きヘ。いっしょになった3人パーティに行き先を尋ねる と2ルンゼとのこと。『前日登ったパーティから悪かったと聞いた』と伝えると、ツェルトがあるからビバークかなどと笑いな がら言っていた。

 取り付き。天気のせいで出足が遅いのか、私達が一番のようである。白根さんは中央カンテはすでに何回か登っているので 核心のピッチを譲ってもらうことにする。従って1P目は私から。

 1P目 V+ 35m(鈴木)
 濡れていてちょっと悪い。朝一で体が動かないこともあって慎重に足を運ぶ。適当に足を 置くとぬるぬると滑る。ロープが交差しないようにと考えているつもりでもいつのまにか交差している。セカンドのビレイで ロープがキンクしてなかなか引き上げられない。下からしきりに『ザイルアップ』の声。やっぱり下でさばかなかったせいか、 それとも上がってくるときに交差させてしまったせいか・・・。ビレイで汗だくである。セカンドで登って来た白根さんに後続が いるかと聞くといるということである。ちょっと急がなきゃ、という気になってしまう。上がって来た後続のトップに聞くと、 『ノマド』という会の4人組らしい。一応遅くてすみませんと断っておく。

 2P目 V 40mくらい(白根)
 ここも濡れていてあまり良くない。私はセカンドなのでちょっとほっとしながら登る。 早く岩が乾かないかな〜。 

 3P目 W 40m (鈴木)
 凹状のルートから左上して中央カンテのルートに移るところ。左上するところがトラバース 気味のスラブだが、苔むして濡れていて悪い。その後『カンテの左のフェースを登る』とトポに書いてあったので左へ回り込む、 回り込む・・・。目の前に見えてきたのが水の流れる嫌な感じのルンゼ。これが正面ルンゼかぁ・・・。などと感心している場合で はない。ちょっと左に回りこみすぎた。ビレイ点がかなり右に見えている。下って登り返しても良かったが、なんとかトラバース できそうな感じだったので1本ランニングを取ってからちょっと悪いが乾いていて快適なフェースをトラバース気味に右上して ビレイ点へ。白根さんもランニングを回収しなくてはならないので否応無しに私の登った左側のルートへ回り込む。
 ごめんなさぁい。まぁでも乾いていて快適なフェースだし、従来のルートよりちょっとグレードもアップして楽しめた(?)かな 。正規ルートを登って来た後続パーティに追いつかれてしまう。ルートを間違って・・・。などと思わず言い訳をしてしまう私。 『お二人とも中央カンテは初めてですか?』の問いに。『今トップを登ってる人は3回くらい登っている』と答えると 『じゃぁ安心ですねー』。

 4P目 V 50m (白根)
 いわゆる中央カンテを登るピッチ。ビレイ点からの眺めがよい。青空も見えて気持ちがいい。 気持ちの良いルートだなーなどと感慨に浸っているうちにロープがどんどん出る。50mとかいてあったから(旧版では40m) ロープはいっぱいのはずだ。慌てて『残り5m』のコールをする。『あと3!』『いっぱい!』。ここで白根さんから『あと1m 出して!』うーん、無いものは無い。仕方ないのでちょっと登る。セルフを長めに取っておいて良かった。なんとか足りたみた いだ。セカンドの私が登攀を開始。白根さんの姿が見えてくる。あともう少しだ。が、ここで『ルート間違っちゃった』の一声。 ん?目の前に見える支点が本来のビレイ点のようで、右へ上がりすぎたようだ。本来のルートは白根さんのいる支点の左側に見え るチムニーを登ってその上のフェースを登るようだ。白根さんのいるカンテ側はランニングが全然なくて登るのは無理なようなの で、そのまま白根さんの左を通過して本来の5P目を登ることにする。

   写真

 5P目 40m W(鈴木)
 チムニーからフェースへ。チムニーは水が流れている。支点が奥の上の方に見える。チムニー 自体は狭くて体はほとんど入らない。なんとか奥の支点にランニングを取る。ほとんど体が入らないがなんとなくチムニー登りで 上に出る。フェースをちょっと登って次のビレイ点へ。今度は間違いないだろう、と自信を持って支点にセルフを取る。

 6P目 30m V(白根)
 フェースを左上から右上。変形チムニ−からのルートと合流するところ。特に問題無く上がって いく。下から上がって来た後続のトップに『本当にそこで合ってますか?』と聞かれてしまう。さすがに2回もルートを間違えると 信用が無くなる。『ええ、多分』今ひとつ胸を張って答えられない自分が悲しい。

 7P目 30m X+(あるいはA1)(鈴木)
 これまでのピッチに比べて傾斜がある。出だしからちょっとかぶっている。乾いて いるのでなんとか越えたところで大きなガバを左手で触るとぐらっと動く。うーん。せっかくのガバなのに・・・。苦しい態勢のまま 次のホールドを探す。結局右のガバにたよったまま左はイマイチのホールドを気休めに触ってよいしょと上がる。少し登って核心部。 水が流れている。左のフェースはホールドもスタンスもほとんどないかあってもすごく細かい。濡れていなければ右の壁に足を張り 出して上がることもできるがさすがに滑りそう。後続もいることだしあまり時間をかけていられないので、A0をすることに決めて お助けシュリンゲをつかむ。それでもあまり良くない。仕方なく右の濡れた壁に足を張る。左手は細かいホールドに指をかけて バランスをとりながら次のお助けに手が届く。そこからは右足は濡れたフェースに、左足は乾いたフェースに足を張り出してフリク ションで上がる。乗り越した先が見える。1本くらいランニングを取っておいた方がいいかと思って取ろうとするがハーケンが壁に 張り付いていてシュリンゲが通らない。張り出している左足のつま先が痛くなってきたのであきらめてお助けのシュリンゲにカラ ビナをかける。乗り越して少し行った所でビレイ点。核心を越えてちょっとほっとする。白根さんが上がってくる。後続はアブミを 出しているせいか時間がかかっているようだ。

 8P目 30m W (白根)
 濡れていて思いがけず悪かった。もうほとんど終わったような気でいただけにちょっと緊張する。

 9P目 40m W (鈴木)
 ところどころ濡れているが慎重に行けば問題の無いフェースと草付。左にちょっとそれて、 烏帽子岩の直下あたりのスラブにビレイ点。ここら辺にくると白根さんもこの先は登っていないということで(前回は同ルート下降 )あたりを見回して南稜との合流点を探す。イマイチはっきりとしないがとりあえず上へ伸ばすことにする。11:15。(帰ってから わかったことだが、ここから空中懸垂で南稜に降りることができたらしい。南稜を登っているパーティがいなかったからここを降り ればよかった。1時間半くらい短縮できたはず。)

 10P目 40m V(白根)
 烏帽子岩の基部を通過してその向こうのルンゼを少し下り上部草付へ。

 11P目 T〜U?30m(鈴木)
 『懸垂岩』までの草付。下から見て懸垂の支点かと思ったらペツルボルトが1本だけ。 よくわからないので短いがここで切る。上がって来た白根さんがあたりを見回す。すぐ下の岩にシュリンゲがかけてあるところから 頼りないフィックスロープが下がっているところを見て、多分ここだということで、とりあえず登攀終了ということに。12:00。

 下降 
 上から見ると岩にシュリンゲがかかっているだけかと思ったらボルトが打ってあった。その支点から懸垂。白根さんが 先に行く。私が途中まで降りると、『ロープが引けないからそこの支点で引いてからもう一度懸垂して』ということなので途中の 支点でセルフを取りロープを引く。足場がイマイチで力が入らないこともあるが、ロープが引けない。途中で引っかかりそうなところ はなかったはずだが・・。結局下にいる白根さんにいっしょに(というかほとんど白根さんに)引いてもらう。なんとか抜ける。 シュリンゲに直接だから動きが悪いのか、結び目がカーブしたところで動き難かったのか・・。フィックスロープの意味がなんと なくわかる。もう1P下降したところでちょっと下って濡れたルンゼへ。ここから六ルンゼの下降。出だしが嫌な感じのところで ある。1P下って南稜に合流。珍しく南稜に人がいない。朝は1パーティいたようだが。そのまま烏帽子スラブまで4P懸垂。14:30。 ここでロープをたたんで一息。携帯が圏外なので残念そうな白根さん。懸垂の支点がその先に見えたのでたたんだロープをほどいて もう1P懸垂でおりる。そこからは歩いて下降。所々濡れていて気を抜けない。なんといっても朝からクライミングシューズを 履きっぱなしでつま先が痛くて仕方が無い。もう1サイズ大きくしようと反省するが、とにかく痛くても降りなくてはならない。 痛くてまともに歩けないのでただでさえ遅い足取りに拍車をかける。せっかくテールリッジの途中でスタスタと歩けるはずのところも 涙が出てくるくらい痛くてペースが上がらない。ようやくテールリッジの末端。2時間近くかかってしまう。靴を履き替えてようやく ほっとする。少し口が開いているが1歩で越えられるくらいで雪渓に移る。朝よりは滑らないが、足の痛みもあってやはりペースが 上がらない。バイルを持ってこなかったのでとりあえずそこら辺に落ちていた木を杖代わりに降りた。次に来るときにはもう少し 大きいクライミングシューズにしようと心に誓いながら駐車場へ。17:00少し前。のんびり片付けて湯テルメへ。
渋滞も無く快調に横浜へ。

  
   午前中は思いがけず青空が広がり、この時期にしては天気に恵まれてラッキーでした。この時期としてはかなり快適な登攀を楽し めたと思う。6月に雨で敗退したにもかかわらず、再度の挑戦につき合ってくれた白根さんに感謝、です。
 下降に時間がかかったことが課題だと思います。

('02-11/16)