10月5ヤ〜8日
前穂高岳・東壁右岩稜古川リニューアルルート〜北壁Aフェース

10/06 19:25
 奥又ベース予定だった山下Pは水を得られないため、ベースを涸沢に移しています。 穂高は徳沢園前の沢が干上がり、奥又出合いの沢も上部に雪渓があるものの流れはありません。
 奥又出合いから涸沢に向かってパノラマ新道を登っている途中、 転倒して額をバッサリ切ってしまったおじさんと遭遇。 7pほど切れているため圧迫止血では血が止まらず途方にくれていたら、 登ってきた後続者が外科のドクターで、その場で縫合手術となりました。 通りがかりの人からプラスチック手袋の提供をうけ、裁縫セットの縫い針を曲げて木綿糸を通し、 4針ほど縫合。針に糸を通したり、糸を切ったりと看護助手をしていました。 患者も麻酔無しの縫合に耐え、タオルとテーピングて圧迫しながら、自力で歩いて降りて行きました。
 そこからしばらく登ったら、今度はおばあさんが足首を骨折していてヘリコプター待ちをしていました。 すでに通りがかりの人で応急処置は出来ていたのですがヘリがなかなか来ないため、 涸沢ヒュッテの遭対協への連絡を頼まれましたが、我々がコルを越えるとすぐにヘリコプターが来ていました。
 何かと疲れる1日でした。涸沢のテントは200張り位あって、ごった返しております。 津田Pとは徳沢まで一緒でした。涸沢にいるはずですが、会えません。 現在、小雨がパラついています。
【山下】

10/07 18:06
 本日は涸沢から5・6のコルを越えて前穂東壁古川ルートに遠征しました。 現在は前穂の山頂で、これから奥穂経由で涸沢に帰ります。 遅くなったので、明日は涸沢から横尾経由で下山します。
【山下】

10/08 15:17
 前穂東壁に入っていた山下・他1は無事下山して、現在松本で昼食中です。
 昨日、前穂の山頂から途中経過をメールした後、 奥穂、穂高岳山荘と順調に進んでザイテングラードを中程まで降りたところで、 「助けてくれ〜」と下の方から声がしました。 ヘッ電で照らしてみると、登山者が崖から落ちて動けなくなっていました。 県警経由で涸沢ヒュッテの遭対協に電話して出動を依頼したら、同行者の通報で今小屋を出たところとの事。 事故者があまりに苦しそうなので、懸垂下降で事故者の所まで降りて応急処置をしました。 その後、遭対協があがって来るまで事故者を保温したり励ましたりと大変でした。 テント帰着は2時半でした。
 本日は下山者で涸沢−横尾間の登山道は大渋滞。予定の時間では下れませんでした。

 東壁右岩稜の古川リニューアルルートはJCCがグレードをデシマルで標記してして発表してあっただけに、 崩壊部分を通過するにはカムなどのナチュラルプロテクションが必用です。
 グレード的には下部崩壊部分の縁に沿って迂回する1・2P目のうち1P目がX−ですが、 人が入っていないのでコケで滑り悪いです。 2P目はW級程度のトラバースですが、浮き石だらけで悪いです。
 3・4P目は旧ルートが残っていて、W級程度でなかなか良いです。
 上部崩壊部分を通過する5P目はトポに出ていた通り右寄りのルートを取りました。 旧チムニーの崩壊を免れた右壁に沿って3m程登り(A1時代のリングハーケンなどが残っている)、 崩壊によって生じたフリクションの良く効くスラブからハングしたフレークを越えます。 右側にJCCによって打たれたと思われる残置ハーケンが有りましたが、 不安だったので左のクラックにカムを決めて越えました。 その上は傾斜が落ちるのは良いのですが、崩壊による岩が溜まっており、落石を出さずに通過するのが困難です。 危険すぎて真っ直ぐには上がれないので、小ハングを越えて右のアリンコハングの岩の上部に向かいました。 おかげでロープの流れが極端に悪くなりました。ピッチグレードとしてはX級程度だと思いますが、 かなり悪かったです。
 アリンコハングの岩の上部からは、大きく開いた岩の割れ目を通ってすぐに北壁大テラスです。
 全体的に難しさよりも悪さが勝るルートで、もう一回行きたいルートとはあまり思えませんでした。 アリンコハングの岩自体もかなり開いていて、落ちるのも時間の問題のように見えます。 アプローチは遠くて悪いですが、ロケーションが良く、 抜けたところが前穂の山頂とアルパインクライミング的には最高なのですが残念です。
【山下】